ミドル・アメリカン・ラディカルズ、頭文字を取ってMARsという。あえて訳せば「米国中産階級過激派」だ。トランプ政権誕生前後に論議された。本をただせば、1970年代、米国政治が激しく流動化した時期に、その震源とみられた「サイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)」を指して一部で使われ出した言葉だ。
トランプ共和党政権からバイデン民主党政権へと移った今、改めてMARsを考えてみたい。政権交代を前に起きたトランプ支持者らによる米連邦議会議事堂襲撃事件は、米国で吹き荒れるポピュリズムを強く印象づけたからだ。
ポピュリズムというのはあいまいな概念だ。その言葉の発生は19世紀末の米国にある。当時の独占資本に苦しめられた中西部や南部の農民・労働者が改革を求めて起こした人民党(ピープルズ・パーティー)運動を指す新造語であった。日本的にいえばムシロ旗運動である。人民党の活動期間は短かったが、当時の民主・共和両党に衝撃を与え、20世紀前半、セオドア・ルーズベルト共和党政権に始まりフランクリン・ルーズベルト民主党政権へと続く「改革の時代」(歴史学者リチャード・ホーフスタッター)を導き出した。
米国におけるポピュリズムを考えるとき、ホーフスタッターの分析が最も適切に思える。それによれば、ポピュリズムは①中央に対する地方の反感、②エリートに対する民衆の反抗や懐疑、③外来の人や物を排斥する土着主義(ネイティビズム)──を原動力に改革を求めていく運動だ。そこには既存の政治体制に反発する革新性とともに、よそ者を排除する反動的な面がある。つまり、右とも左ともいえない。
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