[Profile] Sally Coulthard 英国の作家、デザイナー。オックスフォード大学で考古学と人類学を学ぶ。その後20年間を、家や工芸品、屋外スペースの設計・製作そして執筆に費やす。家の修復、インテリアのデザイン、アウトドアリビングに関する本を多数執筆。
羊といえば、なにを思い浮かべるだろうか。私の場合は、チェスターコートやメリノウールのセーターなど、ふだん愛用している衣類だ。浅はかながら、それ以外に思いつくことがなかった。本書では、羊と人間との思いもよらぬ関係が語りつくされている。文化、貿易、軍事など多くの面で、羊は人類の歴史に影響を与えてきたのである。
例えば、撥水性のある羊毛はモンゴルの遊牧民の移動式住居、ゲルに用いられ、肉は食料となった。世界帝国を築いたモンゴル人の機動力というと馬に目が向くが、羊もそれを支えていたのだ。
そもそも、羊と人類の関係はいつ、どこで始まったのだろうか。1000万年から2000万年前、最古の羊は氷に覆われた中央アジアで進化を遂げ、その後、世界中に移動していったという。現在、家畜として飼育されている羊は、このとき西方のヨーロッパへ移動したもので、「アジア・ムフロン」という種が元になっている。この羊は黒い上毛(ヘアー)に覆われ、柔らかな下毛(ウール)を持つ。
現在の家畜の羊とは違い、古代の羊には大きな角があった。また気温の変化によって毛が生え変わっていたというが、これは羊毛製品を作るうえでは大きな欠点だ。自然に抜け落ちる毛は、人間の都合での採集を困難にした。また、硬くチクチクするヘアーは衣類に向かないし、黒い毛は染めるのも難しい。
では、いつ頃、そしてなぜ、羊は現在のように、白いウールで覆われ、毛が抜け落ちないという特徴を持つようになったのか。本書ではさまざまな説が紹介されているが、実際はよくわかっていないらしい。しかし、この変化が人類の歴史を大きく変えたのだ。
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