[Profile] しもやま・すすむ ノンフィクション作家。アルツハイマー病の研究の歴史について2000年代から興味を持ち、日米欧の主要人物に取材した。1993年米コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。著書に『2050年のメディア』などがある。
現在、全世界で約5000万人の患者とその家族が苦しんでいるアルツハイマー病は、完全に治す方法がないことで知られている。高齢化が進む日本で、今後アルツハイマー病による認知症がさまざまな課題を発生させていくことは想像に難くない。
しかしこの病に関する研究が進み、現在では治療への大きな希望が見えてきているのだという。本書はそんなアルツハイマーという病の征服に挑んだ人々の挑戦記だ。
青森に住む、ある家族の話から本書は始まる。その一族は、長身の美男美女が多い家系でよく繁栄したが、なぜか40代、50代になると、認知症を発症する者が多かった。患者の死後に解剖すると、通常はみっしりと折り重なり隙間などないはずの大脳が、くるみのようになり、脳溝がすかすかに広がっていたという。
ここから話は一気に、アルツハイマー病の正体を突き止めようとする人たちの壮大なバトンリレーへ転じる。ある人は利他的な気持ちから克服の道を探り、またある人は自らの好奇心に基づいて解決を目指す。利他と利己が入り乱れる中、時空を超えて連帯する人々が、アルツハイマー病の克服へと着実に歩みを進める様子がよくわかる。
病の原因が脳細胞の中に見える黒いしみのようなものであると特定され、その正体がアミロイドベータと呼ばれる物質だと突き止められたことから、道が拓(ひら)けていく。
だがアルツハイマー病には、明らかに遺伝によると考えられる家族性のものもある。それを引き起こす遺伝子を特定できなければ流れは断ち切れないが、やがてこの遺伝子も特定された。アルツハイマー病の症状を呈するよう遺伝子を改変したトランスジェニックマウスが開発されるようになると、次はさまざまな治療薬を試すフェーズだ。
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