「アメリカは間違った方向へ進んでいる」。10月28日にそう語ったのは、米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長である。トランプ大統領が、事あるごとに「アメリカのコロナ禍は峠を越した」と楽観論を繰り返すことに対する警告だ。「このままでは、感染者数、入院患者数、死者数の面でアメリカは大きな痛みを味わうことになる」とファウチ氏は語った。
米国は10月中旬以降、新型コロナウイルス感染の第3波に見舞われている。10月末には1日の新規感染者数が10万人近くに上り、死者も1000人近くになった。11月初めの時点で、累計感染者1000万人、死者は23万7000人。来年1月半ばには、1日の死者が2200人に達するという推計がある(米ワシントン大学保健指標評価研究所による)。
第3波の特徴は、感染が全米に広がっていることだ。今年春の第1波ではワシントン州などの北西部州と東部のニューヨーク市が、夏の第2波ではルイジアナ州やミシシッピ州など南部州が中心だったが、今回はほぼ全米に及ぶ。
全米の31州が、10月中に新規感染者数記録を少なくとも1回更新した。ただし、上述のファウチ氏によると、米国はまだ第1波の中にある。感染拡大が収まった証拠がないからだという。
今回の感染拡大の要因はいくつかある。1つは、大学が再開された地域で、秋学期に学生がキャンパスに戻ってきたこと。学生たちは昼間はおとなしくしていても、夜になるとパーティーで騒ぐ。また、寒くなって人々が屋内にこもり、換気の悪い環境で3密が生じる。
ビジネスの停止や学校の閉鎖、マスク着用の義務化などのコロナ対策が「政治化」されたことも、少なからず影響を及ぼしている。ビジネス重視の共和党系知事の州では、若干の経済回復が見られたものの感染の制御がうまくいっていないとの見方がある。米ブルッキングス研究所によると、今年夏以降、人口10万人当たりの新規感染者の発生率は、共和党支持者優勢の州のほうが民主党系よりも高い。
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