2015年、本当に恐いのはロシア危機だ ダウ急落、原油安値更新が示す不気味な兆候

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それが、ダウはすでに1万8000ドルを一時突破し、昨年、ずっと回復が遅れていた雇用者数も、ついにリーマンショック前までのピーク数を上回るまでに改善させたわけです。

さらにその間に、リーマンショックでほぼ破綻しかけていた金融機関を再生させ、GM,フォードの再生も果たし、さらには数々の困難を乗り越えていわゆる「国民皆保険」まで成立させ、昨年末には長年の懸案であったキューバ承認を行い、さらに大胆な不法移民合法化まで達成したわけですから、これだけ見れば成果としては素晴らしいの一言に尽きるわけです。

にもかかわらず・・・えらく評判が悪いと言うのは不幸と言うしかないわけですが、少なくともこれだけの成果を上げている訳ですから、経済面に関しては100点満点と言っていいでしょう。他の大統領だったら今のアメリカはない、と断言できるでしょうね。

その意味では、ブッシュ時代のツケをようやく払い終わったアメリカがまさに世界の先頭に立って経済を引っ張る、というのが今年の世界経済のポイントになるわけです。シェール革命もあり、原油価格は大きく下がるという追い風が吹き、さらには若年労働人口が2030年にかけて増え続けるという、なんとも素晴らしい環境が今のアメリカ経済にはある訳です。

そして強いドルが復活し、財政赤字もGDPの3%内に収めつつあるという、まさにアメリカ経済に死角なし、と言ったところでしょうか。今年は世界経済の中心にアメリカが再び復活した年、と後世にわたり記録されることになるでしょう。

欧州危機再燃に注意せよ

第2は欧州危機の再燃です。ギリシャがくすぶっていますが、金融市場というのはサプライズで大きく動くわけであって、だからこそ最初のギリシア危機の時には大騒ぎになりましたが、今となってはこの問題はもはや完全に織り込み済みで、ユーロから離脱しようが倒産しようが、今さらびっくりする人はいないわけで、その意味では、金融市場的には消化済みの「終わった」材料です。

むしろ欧州にとって厄介なのは、ロシアです。

欧州は未だにNATOで軍事的にもロシアとの対抗軸になっている一方で、ロシアとの経済関係の深度は1998年にロシアが破たんした時とは比べ物にならないほど、深まっています。ワタクシは恐いのは「プーチン大統領の金融自爆テロだ」、と呼んでいるのですが、冗談ではなく、経済制裁が効きすぎて本当にロシアが1998年のように破たんするならば、欧州の打撃は冗談では済まされません。対ロシアの貸出金が自己資本の50%を超えるなどという欧州の大手銀行もあるくらいで、その他、これまでの対ロシア投資の金額を考えれば破たんした時の衝撃は計り知れません。欧州にとっては、ロシアは実に厄介な存在になりつつあるのです。

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