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『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(上・下)』 テロと暗殺が交錯する、紛争地帯の現実と倫理

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イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(上・下)(ロネン・バーグマン 著/小谷 賢 監訳/山田美明、長尾莉紗、飯塚久道 訳/早川書房各3200円+税/上542ページ、下478ページ(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Ronen Bergman 1972年生まれ。調査報道ジャーナリスト。イスラエル最大の新聞イェディオト・アハロノト紙で軍事・諜報分野を担当。モサドの研究で英ケンブリッジ大学から博士号を取得。著書に『シークレット・ウォーズ イランvs.モサド・CIAの30年戦争』など。

アリー・ハッサン・サラメ。テログループ「黒い九月」のメンバーで、1972年にイスラエル選手団が殺害されたミュンヘンオリンピック事件の中心人物とされる。黒い九月の解散後はパレスチナ解放機構(PLO)の幹部として活動。米中央情報局(CIA)とPLO議長アラファートの情報交換ルートとして機能した人物だ。

79年、サラメがベイルートにある自宅から20メートルほどの地点を車で走っている時、道路わきに駐めてあった車が爆発。サラメは搬送先の病院で死亡した。実行犯はイスラエルの諜報機関モサドの工作員だった。

まるで映画か小説のような話だ。本書には、イスラエル建国以来行われてきたこのような暗殺作戦の詳細が、全編にわたり書き記されている。敵に囲まれたイスラエルでは、国家の存亡をかけた戦いが常に行われてきた。

著者のロネン・バーグマンは、イスラエル最大の日刊紙の軍事・諜報担当上級特派員として活躍する。著者はこうした戦いすべてを否定するわけではないが、多くの問題点を指摘する。例えば84年にガザ出身の少年ら4人が偽物の爆弾とナイフで武装しバスジャックを行った事件では、保安機関シン・ベトと特殊部隊により犯人のうち2人が射殺、2人が拘束された。拘束され戦争捕虜となった者の殺害は禁じられている。だが、シン・ベト職員は2人を人けのない場所に連れ出して撲殺し、遺体を激しく損傷させて、怒り狂った群衆によるリンチを偽装した。拘束が可能なはずのテロリストの即時殺害や捕虜への尋問中の暴行、死に至る拷問が常態化していた。

問題はほかにもある。重要人物の暗殺には首相による許可が必要であったが、紛争が始まると、軍などが暗殺作戦を軍事作戦として扱い、許可のないまま実行するケースが頻発する。民主主義のプロセスを破壊しかねない問題だ。

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