[Profile]Sven Carlsson 1986年生まれ。スウェーデンの日刊経済紙で活躍するジャーナリスト。テクノロジー企業を中心に取材している。Jonas Leijonhufvud 1974年生まれ。98年から金融ジャーナリスト。現在は共著者と同じ日刊経済紙の記者として活躍中。
今や巨人となったスタートアップ企業の成功譚ではあるのだが、不思議な読後感をもたらす一冊だ。世間知らずの大学生によるウェブサービスが世界中へ広がっていく爽快感もなければ、急成長に浮かれて失敗するお茶目さもない。例えるなら、人気ファンタジードラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の重厚なタイトルBGMが延々流れているような世界観。その通奏低音の中に、人を物語へ強く引き込む異質な磁力がある。
本書には、音楽ストリーミング分野で世界最大の企業となった「Spotify(スポティファイ)」が北欧で産声を上げてから、世界中に「いつでも音楽を」提供するようになるまでの過程が描かれる。プロセスをユニークなものにしているのは、起点がスウェーデンであったこと、そして裾野の広い音楽業界が舞台である点だ。この2つの条件によって、世界を変えるまでの独自の道筋が示されたと言っても過言ではない。
スウェーデンは、コロナ禍対策として集団免疫獲得を目指す道を選んだことからもわかるように、時に思い切った戦略を取ることがある。2000年代のIT黎明期においても、パソコン普及運動を行ったりブロードバンド網を整備したりと、早い段階でネットインフラが整備されていた。
もちろんこれには功と罪がある。功の1つは、本書の主人公ダニエル・エクをはじめとしたIT技術者が多く育ったことだ。「待つなんてクールじゃない」というモットーの下、同社のサービスは0.2秒以内の再生にこだわっていたが、これを実現させたP2P技術の活用においてはインフラが整備されたスウェーデンという場所が有利に働いたことだろう。
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