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『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』 「正しさ」という思考停止、集団暴走の仕組みを学ぶ

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ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか(田野大輔 著/大月書店/1600円+税/201ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] たの・だいすけ 1970年東京都生まれ。98年京都大学大学院文学研究科博士後期課程(社会学専攻)研究指導認定退学。京都大学博士(文学)。現在、甲南大学文学部教授。専門は歴史社会学。著書に『魅惑する帝国──政治の美学化とナチズム』『愛と欲望のナチズム』。

白いシャツにジーパン姿の約250人が室内で足を一斉に踏みならす。「ハイル、タノ」の大声とナチス式敬礼で指導者に忠誠を誓う。屋外に出れば、いちゃつくカップルを集団で取り囲み、「リア充、爆発しろ」と糾弾する。カップルを退散させた「田野帝国」の構成員は、拍手とともに目標達成を宣言する。

漫画のような光景だが、これは著者の田野大輔氏の授業の一コマだ。ファシズムを体験し、集団暴走の仕組みを理解する。2010年から19年まで、甲南大学の体験学習授業として毎年実施された。

体験学習には、さまざまな工夫や演出を施している。教室では、まず席替えで仲のよい学生同士を分断し、「総統」である著者の話に意識を集中させる。「帝国」のロゴワッペンや「制服」を身に着け、一体感を醸成する。サクラの学生にあえて私語をさせ、教壇に引きずり出し、「田野総統に反抗しました」と書かれたプラカードを首にかけ、さらし者にする。本書は体験学習の様子を中心に、ナチズムの成り立ちなどにも言及し、ファシズムとは何かについて理解できる内容になっている。

著者が何度も繰り返し主張するのは、ファシズムが上からの抑圧だけでは成り立たないという点だ。下からの合意がなければ、集団の一人ひとりが喜んで参加しなければ、成立しないのだと強調する。

ファシズムを過熱させるのが、無責任の連鎖だ。上からの命令に従い続けていると、責任感が麻痺(まひ)する。構成員は団結して異端者を攻撃するようになるが、権力の庇護の下、責任を問われない暴力には歯止めがかからず、本人も気付かぬうちに攻撃は過激化する。それは集団から異端者を排除するまで止まらない。「正しさ」を信じて疑わない思考停止の集団は、構成員に心地よさすらもたらす。

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