[Profile] Frank Langfitt 米国のジャーナリスト。ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)ロンドン特派員。ボルティモア・サン紙北京特派員(1997〜2002年)、NPR上海特派員(11〜16年)として、中国報道に携わる。プリンストン大学卒業後、ハーバード大学ニーマンフェロー。
スーパーパワーの1つであり、世界でも存在感を増していく中国。しかしこの国の輪郭をつかむことは難しい。中国国家が語る中国と、中国人が語る中国との間には、同じ国とは思えないくらいの大きな差異が存在するはずだ。
しかしその差異をあぶり出すには、さらなる困難が伴う。ほかの国であればインターネット上の声を拾っていけば容易なはずだが、そこにはグレートファイアウォールと呼ばれる、中国のネット検閲システムの高い壁がそびえ立つ。
本書は、この高き壁を突破しようと試みた著者の物語であり、その過程で出会った人々──個人的挑戦に取り組み、中国の成長と矛盾が生み出す不確かな転換期を乗り切ろうとする人々の、つくろわぬ物語である。
突破する方法は、意外なほど身近なところにあった。米国人ジャーナリストである著者は、過去に経験したタクシードライバーの経歴を活用しようと思い立つ。人はタクシーに乗ると、それだけで饒舌(じょうぜつ)になるものだ。本来は公には語れないような個人の主義や主張を惜しみなく披露してくれると考えたのである。インタビューの相手を誘い込むための作戦も用意した。それが「話を聞かせてくれれば、料金はタダ」というシステム。こうして物語は走り出すのだ。
2014年からの数年間、著者は大勢の乗客たち──工場労働者から農夫、銀行家、人権派弁護士までを乗せて、中国中を走り回った。そしてその後も乗客たちとつながり続け、普通の人々が何を欲しがっているのか、自分たちの国、そしてそれより広い外の世界をどのように見ているのかを突き止めていく。
これら個人の物語を躍動感あふれるものにしているのは、時代の転換点という立ち位置である。親世代と子世代、都市と地方、収入の多寡など種々の格差が、変化のスピード感ゆえに同じ空間に同居しているため、さまざまなドラマが生み出される。
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