[Profile] Yaakov Katz エルサレム・ポスト紙編集主幹。米シカゴ出身。イスラエル経済相とディアスポラ(海外在住ユダヤ人)担当相の上席政策顧問、米ハーバード大学の講師を務める。共著書に『Weapon Wizards(兵器の天才)』『Israel vs. Iran』。
2007年、シリアの砂漠地帯で密(ひそ)かに建設されていたアルキバール原子炉を、イスラエルが空爆した。イスラエル政府がこの攻撃を公式に認めたのは18年になってからだ。本書は、秘密裏に行われ、その後もイスラエルが黙秘してきた原子炉攻撃の全貌と、その意思決定プロセスに迫ったノンフィクションだ。
遠い中東の話だが、私たちにも深く関わる問題だ。なぜなら、シリアの核開発に関与していたのは北朝鮮である。つまり、日本の安全保障に直結するのだ。さらにいえば、その後のシリア内戦で、アルキバール原子炉があった地帯はIS(イスラム国)に占領された。原子炉が破壊されていなければ、ISが核武装していた可能性もあったのだ。
07年春、イスラエルの諜報機関モサドのダガン長官は、シリアの核開発の情報を米国に伝えた。米国は衝撃を受ける。CIA(米中央情報局)はシリアの動きに気づいていなかったのだ。
イスラエルは米国が原子炉を破壊してくれることを望んでいた。イスラエルが単独で原子炉を破壊した場合、シリアのアサド大統領が反撃し、全面戦争になる危険性があるからだ。当時イスラエル軍は前年のレバノン侵攻で手痛い損害を被っており、シリアとの全面戦争は避けたかった。だが、米国はイラク戦争の損害と、大量破壊兵器の偽情報に踊らされた経験から、同盟国イスラエルの要請を拒む。
政権内の意見対立を経て米国が出した答えは、IAEA(国際原子力機関)に提訴し外交的圧力をかけ、軍事力行使は最終手段、というものだ。これはイスラエルのオルメルト首相が最も恐れた結論だった。原子炉建設の情報が漏れているとアサドが知れば、原子炉を保育園にでも偽装してしまうだろう。そうなれば軍事力の行使は不可能になる。
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