[Profile] かとう・ひふみ 1940年福岡県生まれ。早稲田大学中退。54年に当時の史上最年少記録14歳7カ月で四段に昇段してから2017年6月20日の引退まで、62年10カ月にわたりプロ棋士として活躍。
わたなべ・あきら 1984年東京都生まれ。加藤一二三、谷川浩司、羽生善治に続き、史上4人目の中学生棋士となる。棋王、王将、棋聖の三冠(2020年4月時点)で現役最強棋士。
プロ棋士への道は、険しい。かつて米長邦雄・永世棋聖が「兄たちは頭が悪いから東大に行った。私はよかったから棋士になった」と話したように、プロ棋士を目指す奨励会は日本有数の「頭脳集団」ともいわれる。だが、ひたすら将棋に打ち込むエリートたちの中でも、中学生にしてプロ入りした「天才」は長い歴史の中でわずか5人にすぎない。加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、そして藤井聡太。本書はそのうち加藤、渡辺の2人が、将棋にとどまらず、物事をいかに捉えているかを語る。
勝負事にどのような気構えで臨むのか、運やツキを信じるか、自分の「型」にはどこまでこだわるべきか、事前の研究はどのようにすべきか、直感は正しいかなどなど。仰々しいタイトルだが、われわれ凡人の参考になることも多い。
機械が人の仕事を奪うという議論は古くて新しいが、将棋の世界もビジネスの世界と同じくAI(人工知能)が猛威を振るう。盤の前での思考力と同程度に、コンピューターによる事前の分析が重要になっている。棋風と言えるような棋風もなく、どんな戦法でもそつなくこなす能力に長けた棋士も増えた。
30代半ばで目下、三冠(棋王・王将・棋聖)のタイトルを保持する渡辺もこうした時代の波にさらされ、数年前に大スランプに陥った。自らを「アナログ」派と称する渡辺はどのように「モデルチェンジ」を図り、復活したのか。大きな変化の流れの中でどのように自分を変えていくか。デジタル時代に生きなければならないサラリーマンにとっても学びは少なくない。
一方、「ひふみん」の愛称で知られる加藤は今の時代も「思考力」「直感力」の重要性を説く。加藤の関心は、勝負よりも、一局が「最善手」の連続で構成されることにあるのが興味深い。
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