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『仁義なき聖書美術 新約篇』 ヤクザ・宗教・アート 奇跡のコラボレーション

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仁義なき聖書美術 新約篇(架神恭介、池上英洋 著/筑摩書房/1600円+税/162ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] かがみ・きょうすけ 1980年生まれ。作家・フリーライター。早稲田大学卒業。『仁義なきキリスト教史』『よいこの君主論』(辰巳一世との共著)など著書多数。
いけがみ・ひでひろ 1967年生まれ。東京造形大学教授。東京藝術大学大学院修士課程修了。専門はイタリアを中心とする西洋美術史・文化史。

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである──よく耳にする言葉である。しかし、組み合わせの新しさにも程があるだろう。本書は新約聖書の物語を、なぜか広島ヤクザ風に語り直して紹介し、それらを題材とした美術作品の読み解き方を教えてくれる一冊なのだ。

かの有名な「最後の晩餐」のシーン。イエスは周囲の面々にこう告げる。「言うとくがの。この中にわしのことを密告(チンコロ)するヤツがおる」。

また有名な山上の垂訓のシーンでは、こんな言葉も飛び出す。「右手のエンコ(指)を要求してくるなら、左手のエンコもくれてやらんかい」。

これまでにも「カップ焼きそばの作り方を文豪たちが書いたら」のシリーズや、「アップル製品の広島弁バージョン動画」など、文体と内容のミスマッチが生み出すエンターテインメントには数々の名作と呼ばれるものがあった。

しかし本書の組み合わせには、もう少し深みがあるように感じる。宗教とヤクザ、この一見無関係な両者を結びつけているのは、人間社会の基盤にある極めて世俗的な部分である。宗教もヤクザも「言う人」と「信じる人」との人間関係があって、初めて成立するものなのだ。

考えてみれば、この構造は、ビジネスやコミュニティーでも同様だ。いかにイノベーションやテクノロジーを叫ぼうとも、根底にあるのは人間同士の仲間意識である。そういった意味で本書は、宗教とヤクザの用語を入れ替えながら、組織の論理、つまりは組織論を説いたものと捉えることもできるだろう。

固い絆で結ばれた組織には、はたから見ればおかしなところが多々あるものだ。極めて常識的なふるまいをする人間同士の間に、固い絆が生まれることはおそらくないのではないか。また逆説的ではあるが、固い絆で結ばれた組織であるからこそ、裏切りや内輪もめも発生する。だからこそ組織の論理が必要になるのだ。

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