先日、わが家に日本盲導犬協会のキャリアチェンジ犬(ラブラドルレトリバー、1歳雌)がやってきた。私事ながらめったにない機会なので、今回は音楽家と犬の関係について書いてみたい。
クラシック史上最高の愛犬家は誰かと調べてみると、意外な人物が登場する。それはリヒャルト・ワーグナー(1813〜83)。ドイツ後期ロマン派を代表するオペラ作曲家だ。バイロイトのワーグナー夫妻が眠る墓のそばにはかわいがっていた犬・ルスの墓があり、その愛犬家ぶりが想像できる。
借金を踏み倒し夜逃げした若き日にも、巨大なニューファンドランド犬・ロッパーは手放さなかった。犬同伴で乗り込んだ貨物船は嵐で遭難しかけ、この地獄のような経験を生かして書き上げたオペラ『さまよえるオランダ人』が出世のきっかけとなるのだから、人生何が幸いするかわからない。ともあれ、人を踏み台にして自らの理想を実現してきたワーグナーだが、犬には寛容だったのだ。
一方、モーツァルト(1756〜91)は、愛犬ピンペル(雌のフォックステリア)の様子を尋ねる手紙を旅先から何通も出している。「わが家のピンペル嬢は元気ですか? 彼女に1000回のキスを」などと書かれた手紙のやり取りからは、ピンペルがモーツァルト家のアイドルであったことがうかがえる。名曲『子犬のワルツ』を遺(のこ)したショパン(1810〜49)も、「今日は輝くような日で……子犬のマルキーズは私と一緒に残ってソファに寝そべっています。サンド夫人はこの子の白いふわふわの毛を毎日ブラッシングしています」といった愛犬愛あふれる手紙をしたためている。
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