2019年、金融財政分野で最も話題をさらったのは、MMT(現代貨幣理論)と新デジタル通貨・リブラだろう。
「自国通貨建てであれば、政府は財政赤字を気にせずにいくらでも借金できる」というMMTの極端な主張について、本誌はたびたび批判してきた。だが、MMTはそのベースとなる貨幣論の部分では、一般的なポストケインズ学派の内生的貨幣供給論を共有しており、実は違和感が少ない。むしろ、低インフレは金融政策だけで脱却できると説いた主流派経済学の貨幣数量説が説得力を失っただけに、通貨の説明ではMMTに分がある。
MMTの核心は、負債(借用証書)が通貨の役割を果たすという部分だ。政府は国債を発行し、中央銀行は金利操作のためにその国債を市中で購入して民間銀行の準備預金に置き換える。この国債と準備預金という統合政府(政府+中央銀行)の負債こそが通貨の根源だとMMTは説く。
われわれが使う銀行預金も最終的には、中央銀行の準備預金を使って決済され、統合政府が決めた通貨を計算単位として使っている。そのため、一般の銀行預金も政府を頂点とする負債貨幣のピラミッドの下部に位置づけられる。
実は、リブラもMMTの言う負債貨幣である。リブラは、米フェイスブックを中心とする非営利団体リブラ協会が発行を予定するグローバルなデジタル通貨だ。リブラ協会は、ドルや円などの通貨(各国中央銀行の負債)を利用者から受け取って、リブラというリブラ協会の負債と交換する。その後、利用者から受け取った通貨で各国の国債を購入する。これは中央銀行が行っていることと同じだ。
政府以外の負債も通貨に
MMTは、政府が自国通貨で納める租税を課すことで通貨需要を作るため、国民は何があっても自国通貨から逃げないという論理を据える。これが「政府はいくらでも借金できる」という極端な主張に直結するのだが、通貨の需要はほかの形でも生まれうるだろう。
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