ロングランで続く英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)劇に新たな論争が持ち上がった。ジョンソン首相は離脱協定案を改善する策を隠し持っているのか、それとも英国をただ「合意なき離脱」の崖っぷちに引きずり込んでいるだけなのか、いったいどちらなのか。
首相が議会を閉鎖するという現実離れした光景を前に、私は同じく貴族院議員を務めるマイケル・ドブズ氏とこんな雑談を交わしていた。現実政治の策謀がフィクションを超えてしまったからには、政治サスペンスの書き手もいよいよネタ切れかもしれませんな──。
ドブズ氏といえば、あの人気政治ドラマ「ハウス・オブ・カード」の原作者だ。権謀術数を駆使する悪の主人公も、今の英政界のひどさを目の当たりにすると、ずいぶんと品位ある政治家に思えてくる(編集部注:議会は9月10日に閉鎖されたが、最高裁で違法との判決が下り、25日再開された)。
問題はジョンソン氏が何らかの秘策を持ったうえで、国の混乱に拍車をかけているのかどうかだ。
物事を論理的に考える人々は、同氏には奥の手があるとみる。国を無秩序状態に陥れ、抵抗勢力が消耗しきったギリギリのタイミングで穏健路線に急旋回。周囲がほっと胸をなで下ろした隙を突いて与野党議員を抱き込み、過去に3度否決されたメイ前首相の離脱協定案とさして変わらない案を議会にのませる。そんな作戦だという。
だが、議員やゴシップ好きのジャーナリストらの見方は違う。こうした人々の間では、ジョンソン氏は周到な人物ではなく、猪突猛進して英政界(ウェストミンスター)をぶち壊すお調子者との見方がもっぱらだ。妥協の道を自ら排除し、議会を黙殺し続けるジョンソン氏は、総選挙を唯一の頼みの綱としながら合意なき離脱(さもなくば自らの政権の崩壊)に向けて突き進んでいる。
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