人類は科学の多大なる恩恵に浴してきた。だが、科学を過信し、繰り返し大惨事を引き起こしてきたのも人類の歴史である。
かつて旧ソ連などで進められた集団農場は、その一例にすぎない。集産主義に基づき農業生産を飛躍的に向上させる企ては、反対に大飢餓の原因となった。理想都市を目指すトップダウンの都市計画があだとなり、都市が荒廃することもあった。このように科学を絶対視しつつ“上から目線”で行われる社会変革を、政治学者のジェームズ・スコット氏は「ハイモダニズム」と呼んで批判している。
歴史が教えるところ、ハイモダニズムの破壊力は権威主義的な政府が強国化政策をとるときに最大となる。ソ連の集団農場でいえば、陣頭指揮を執ったソ連共産党が権威主義化し、これに抵抗できる者は事実上いなくなっていた。
ただ、権威主義は国家に限った現象ではない。実際、全能感がみなぎる場所なら、権威主義の芽はどこにでも存在する。デジタル技術が世界をよくすると信じてやまないテクノロジー業界がいい例だ。
なるほど、昨今の技術革新のおかげで生産性は大きく向上し、生活は一段と快適になった。しかし、技術信仰は、いとも簡単にハイモダニズムの悪夢に変わりうる。
人工知能(AI)があればあらゆる問題が解決するかのような言説が、世の中にあふれているのは危険だ。なぜか。AI万能説は、AIを支配する者とAIによって生活を変化させられる者との間に“力の格差”を生み出す原因となるからである。支配される側は基本的に、AIの用途やアルゴリズムの設計に口出しできない。
ソーシャルメディアが直面している問題を見るといい。「世界をつなげる」はずだったフェイスブックやツイッターはフェイクニュースやヘイトスピーチを拡散し、いじめに拍車をかけている。
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