8月に米国で起きた2つの銃撃事件。オハイオ州デイトンとテキサス州エルパソで39人が亡くなった。トランプ米大統領は「わが国は人種差別や偏見、白人至上主義を非難しなければならない」と声明を読み上げた。
だがこの声明には、過去の大統領が強調してきた米国社会に団結をもたらすメッセージ性は皆無だった。これでは白人至上主義者には痛くもかゆくもないだろう。
デイトンでの事件の動機は不明だが、20人の命を奪ったエルパソの事件は人種への偏見が背景にあるとみられている。犯人はテキサス州ダラス近郊に住んでいたが、1000キロメートル離れたヒスパニック人口の多いエルパソで犯行に及んだ。犯行直前には「移民は米国の未来にとって有害でしかない」という声明をネットに投稿していた。しかも、ニュージーランドのクライストチャーチのイスラム教礼拝所で今年3月に51人が殺害された事件について犯人を支持するとも表明していた。
米国のリベラルメディアには、エルパソの凶行は単なる銃撃事件ではなく、「白人至上主義テロ」と考えるべきだという意見が出てきている。8月4日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説は、2001年の同時多発テロ以降、米国はイスラム過激主義のテロと戦ってきたが、今や白人至上主義による暴力が米国と世界の問題だと指摘する。そして同紙の調査によれば、少なくとも11年からの白人過激主義による殺人犯の3分の1は、ほかの人種差別に基づく殺人に影響を受けている。
分断をあおる大統領
自身の再選のため白人保守層に移民への不安をあおってきたトランプ氏を非難する声は、この事件でますます大きくなった。エルパソの銃撃犯は「わがテキサスは、ヒスパニックに侵略される」という警告をネットに投稿していたが、トランプ氏も支持者との集会で不法移民の越境を「侵略だ」と繰り返し訴え、メキシコ国境に米軍を派遣しているからだ。
この記事は有料会員限定です
残り 606文字
