[Profile] Gina Keating/フリーランスの経済ジャーナリスト。米UPI通信、英ロイター通信に記者として在籍し10年間以上にわたってメディア、法曹界、政界を担当。独立後はビジネス誌や娯楽誌、ライフスタイル誌などに寄稿している。本書は初の著書に当たる。
どんなに有名な大企業であっても、始まりはちっぽけなスタートアップにすぎない。今や世界中の人に知られる存在となったNETFLIXであっても、それは同様だった。
本書は世界を熱狂させる数々のエンターテインメント作品を手がけてきた同社における、創業当時の物語である。まだストリーミング配信というものが主流ではなく、宅配DVDレンタル業を営んでいた時代が舞台だ。
彼らはDVDと倉庫とソフトウェアを組み合わせ、いかにして世界を席巻していったのか? それを元ロイター通信記者の筆者が、余すところなく記している。
スタートアップものといえば、大学を舞台にしたギーク(オタク)の成長物語を想像する人も多いかもしれないが、NETFLIXはひと味違う。彼らは初期のステージからある程度成熟しており、その組織の内側は強者のマインドに満ちていた。
それもそのはず。共同創業者のヘイスティングスとランドルフ。この2人は、すでに起業家として成功を収めたうえでの再チャレンジだったし、メンバーの大半は大きなソフトウェア会社で管理職を経験した逸材たちだったのだ。
数学を美しいと感じるヘイスティングスと、ダイレクトメールを美しいと感じるランドルフ。この2人が立ち上げたNETFLIXは、自分たちの知的DNAを受け継ぐ会社を作り、「書籍以外の何かを扱うAmazonになる」という目標を設定することからスタートした。
この時期のNETFLIXは、表面的には巨大なビデオレンタル店だ。しかし表の皮を一枚めくってみれば、中身は人間の嗜好そのものを数式化しようともくろむ、獰猛(どうもう)な集団だった。長期的な顧客価値を最大化するために独自のアルゴリズムを作り出すと同時に、複雑な物流システムを築き上げていったのだ。
この記事は会員限定です
残り 795文字
