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ピーター・ティールの真の姿 実は「悲観的な思想家」?

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  • 会田 弘継 ジャーナリスト・思想史家
国家の介入を排除し、個人の自由を尊重するリバタリアン(自由至上主義者)としても有名だが…(撮影:梅谷秀司)

シリコンバレーの「ドン(首領)」とも呼ばれる、起業家にして投資家のピーター・ティール(51)。IT業界のリーダーの中で、ただ一人ともいえるトランプ大統領支持者だ。そのティールの「思想」をめぐって、新興論壇誌『アメリカン・アフェアーズ』オンライン版に興味深い分析が掲載された。

同誌はトランプ登場を機に米国思想界再編を狙って2017年春に発足した。既成の米国論壇の左右にとらわれていないだけに、分析はティールの本質にずばり斬り込んでいる。

人の思想に分け入る手がかりは、何をおいても著作だ。だがティールの場合、著作はビジネス書『ゼロ・トゥ・ワン』(14年、邦訳NHK出版)と、24年前に書いた母校の米スタンフォード大学における多文化主義の状況を批判した本(未訳)だけだ。

『アメリカン・アフェアーズ』の分析は、ここ数年の雑誌・新聞への寄稿や講演のうち、起業や投資ではなく文明や宗教を扱った数点から、現在の思索に分け入っている。重要なのは、11年10月に保守論壇誌『ナショナル・レビュー』に寄せたエッセー「未来の終わり」と、15年6月に同『ファースト・シングス』に寄せた「エデン主義に抗して」、14年5月に行われた英国の著名な神学者N・T・ライトとの対話の映像記録だ。

これらを分析して浮かび上がるのは、『ゼロ・トゥ・ワン』で創造的な起業家精神を鼓舞したティールとは異なる悲観的な思想家の姿である。

ITの急速な発展に懸念も

ティールは、自らも関わるIT産業の飛躍的な発展がもたらした情報化時代は、決して人類の明るい未来を保証していないと懸念している。フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』をもじった「未来の終わり」というエッセーのタイトルは、そのことを示している。

科学技術の発展は1970年代以降歪んでいる、とティールはみる。期待されたような豊かな世界は訪れず、多くの人々は残酷なまでに厳しい弱肉強食の「ゼロサム世界」で敗者の立場に置かれている。米国ではかつての「アメリカンドリーム」は失われた。食糧難で弱者は生き残れないというマルサスの人口論の予測は克服したが、貧者の肥満という異常な形で優勝劣敗が起きている……。

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