今では「名人の技」という言葉が、ゴルフでは死語になってしまっている。スイングのセオリーにしても、メカニカルな分析やフィジカル面などが注目されていて、どこか先達の「名人の技」という部分が消えてしまっているような気がする。
1月下旬に日本プロゴルフ殿堂入りをしたプロゴルファーは、4名いる。佐藤精一、中嶋常幸、森口祐子、そして小林法子だ。その一人、佐藤精一さんと一緒にプレーして取材をするという企画があった。そのときの言葉が今でも脳裏に刻まれている。
「初めから曲がるんだから、曲げようと思って打ってごらん。曲がるボールを練習してごらん」
という言葉は、古くから我孫子出身のプロたちに受け継がれていた。今では、真っすぐなボールを求める傾向が強い。でも、実は、曲げるボールを覚えると、真っすぐなボールも打てるというのが、名人たちの言葉である。
身長161センチメートルの小柄で、少年の頃には競馬の騎手になろうかとも考えたことがあったという。そんな佐藤さんも、我孫子で小技を体得した一人である。
小さいグリーン。しかも砲台が多く、深いバンカーもある。そこで数々の《佐藤精一流》のアプローチが生まれた。さらに、袖ヶ浦に移って、今度は飛ばすことに磨きがかかったのだろう。
早打ちマックという異名が、かつて佐藤精一さんにつけられた。アドレスからフィニッシュまでのショットのテンポが非常に速かったからだ。けれども、振りのタイミングに力みがなくて、パワーの使い方に無駄がなく、クラブヘッドの重みをしっかり感じながら振っているスイングは、慣性モーメントを最大限に使っているものだと思った記憶がある。
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