「リーダーに必要な条件はなんでしょうか」
台湾の元総統、李登輝が日本からの表敬訪問を受けるとほとんど例外なく受ける質問だ。李登輝は世界でも傑出したリーダーのひとりだろう。戦後まもなくから40年近い戒厳令が敷かれ、国民党の独裁体制に支配されてきた台湾を、一滴の血も流さず、平和的に民主主義と自由の世界へと導いた。李登輝が「ミスター・デモクラシー」と形容されるゆえんである。
李登輝の民主改革は2000年、中華文化圏としては史上初の、選挙による政権交代によって完成を見た。李登輝は総統選挙に出馬せず後進に譲ったが、皮肉にも政権を手放した責任をとって国民党主席を辞任し、政治の第一線から退いたのである。
必ず信仰を持たなければならない
とはいえ、95歳になった今も李登輝の発言力は健在だ。特に、日本統治下で生まれ育ち、京都帝大に学んだ「台湾民主化の父」の言葉を聞きたい、と望む日本人は後を絶たない。そのために私のような日本人秘書が必要とされているわけだ。
冒頭の質問に李登輝は次のように答える。
「指導者になるのであれば、必ず信仰を持たなければならない。孤独な指導者が縋(すが)れるものを持つのだ」。
李登輝は敬虔なクリスチャンだ。副総統だった1988年1月13日、総統の蒋経国が急逝し、憲法に則ってその日のうちに総統に昇格することになった。深夜に帰宅するが、突然国家を委ねられた重責に全く眠ることが出来ない。寝返りを繰り返す夫を見かねた夫人が言った。「聖書を開いてお祈りしましょう」。
この記事は会員限定です
残り 638文字
