この4月に『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)を上梓した駒澤大学准教授の井上智洋氏のもとには、自民党の小泉進次郎衆議院議員から霞が関の官僚、共産党機関紙・しんぶん赤旗の記者までさまざまな人々が話を聞きに来る。
「AI(人工知能)時代はかつてない格差社会になる。ユヴァル・ノア・ハラリ氏が予言するように」(井上氏)
ハラリ氏は近著で「富と権力は全能のアルゴリズムを所有する、ほんのわずかなエリート層の手に集中して、空前の社会的・政治的不平等を生み出すかもしれない」と近未来の実相を予見する。違う角度から見れば、その他大勢の「無用者階級」(ハラリ氏)が路頭に迷うということだ。「無用者」はどうやって稼ぎ、生き抜くのか。
「誰もが生きていくための制度として、ベーシックインカム(BI)の導入を考えなければならない時期に来ている」(井上氏)
BIとは、政府がすべての国民に最低限の生活を保障する収入を支給する制度のこと。聞こえのいい制度だが実現のハードルは高い。働かずとも政府が生活資金を保障するとなれば、勤労モラルが崩れかねないという課題が一つ。
さらに大きな課題が財源だ。全国民に月7万円(年間84万円)を支給すると仮定すれば、1年間に必要な財源は約100兆円に及ぶ。BIはほかの社会保障制度をすべて廃止することを前提とするため、生活保護や児童手当、年金など既存の制度は廃止される。これらで確保できるのは約30兆円(医療費除く)。さらに財源として公共事業費や中小企業対策費などが挙がる。それでも足りない部分は消費税や所得税の引き上げで、となるのだが、実現性は乏しい。
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