静岡県熱海市は伊豆半島の付け根にある温泉地。大分の別府、群馬の草津などと並んでつねに名湯番付の上位にランキングされるえりすぐりの観光地だ。人口は2015年時点で約3万7000人。そのうち85%が観光をはじめとする第3次産業に従事しているという特殊な街だ。
熱海の歴史は江戸時代にさかのぼる。徳川家康が湯河原、箱根に加えて熱海を温泉地として好んだことから知名度がアップした。
その知名度を決定的にしたのが1934年の丹那(たんな)トンネルの開通だ。このトンネルはJR東海道本線の熱海駅から函南(かんなみ)駅を結び、全長は7804メートルに及ぶ。東海道本線はトンネルが完成するまで国府津(こうづ)駅から現在の御殿場線ルートで沼津駅へつながっていたが、急勾配だったため鉄道の円滑な運行に支障が生じていた。主要幹線が開通したことで、温泉地・熱海の地位は決定的なものになった。
1960年代になると熱海は新婚旅行の聖地として繁盛した。その後は社員旅行や団体旅行を受け入れ、91年に熱海の主要観光地を訪れた観光客(観光入込客)数は940万人、宿泊者数も446万人とピークを記録した。
変化が訪れたのは平成バブル崩壊以降だ。景気低迷のみならず、日本人のライフスタイル、観光スタイルが変化し、団体旅行にほぼ特化していた熱海の街に閑古鳥が鳴くようになる。11年の観光入込客数は523万人、宿泊者数は256万人に落ち込んだ。
さらにこの街をむしばんでいるのが住民の高齢化と空き家問題である。15年の総人口に占める高齢者の割合は44.6%に達した。15~64歳の生産年齢人口は48.1%だが、やがてこの数値が逆転することも懸念される。この街は丘陵地帯にあることから街中は急坂が多い。道も狭いことから、高齢者にとって住みやすい環境とは言いがたい。
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