移住慣れしている自信のある私でも、いまだに失敗や後悔をする。そんな自分の経験を伝えよう。
私は22歳のとき、長野県軽井沢近くの佐久にアパートを借りた。そして平日は東京、週末は佐久という、週末移住の生活を始めた。それ以来約20年、さまざまなところに移住してきた。そうしてたどり着いた結論は、次の一言に集約される。
「最悪の状況を理解し、想定することに勝る王道はない」
本稿では特に、都会暮らしの人が地方移住するときに陥りやすい状況と、それに対処する際の鉄則を記す。

鉄則1は、現住所から150キロメートル圏内で移住先を探すことだ。150キロメートルは高速道路で2時間弱の距離。いつでも都会に帰れる。「田舎の人はいろいろ話しかけてくれて、人情味にあふれている」と感じても、そのうち鬱陶しさに変わる局面が来る。そんなとき都会にいつでも行けるという気持ちの軽さがあれば、心にゆとりができる。
鉄則2は、移住候補地の隣接市町村を訪れること。人は自分の土地のことは語りたくないもの。しかし、よそのことは饒舌(じょうぜつ)に話す。隣接市町村に移住した元・都会人がいれば、その人の話を聞いてみよう。徹底的にデメリットを把握したうえで、それでもなお移住したいか、比較・検討することが移住成功の大前提だ。
鉄則3は住職と駐在さんに聞くこと。移住したい場所を絞り込めたら、やはりその土地の人の話を聞きたい。地方は古老を頂点に、首長、青年会長、婦人会長、消防団長など完全なるヒエラルキーが形成されている。その構成員は決して本音を語らない。しかし、そのヒエラルキーを超越した存在の人もいる。菩提寺の住職だ。集落の発足からの歴史、住民の上下関係・経済状況を把握している。警察権力を背景に持つ駐在さんもヒエラルキーを超越している。治安維持の観点から人とモノの動きや地域の特性を把握している。
この記事は有料会員限定です
残り 685文字
