リーマンショックから丸10年。当時は過剰流動性からバブルが生じ、金融機関は信用リスクを甘く見た住宅ローン融資を行った。さらに、これを証券化して、格付け「トリプルA」のラベルを張り、投資家にリスクを転嫁。その後、住宅ローンが焦げ付き、証券化商品の価格は暴落、流動性は枯渇し、市場全体が機能不全に陥った。リーマン・ブラザーズが破綻し、AIGが政府管理下に置かれ、メリルリンチがバンク・オブ・アメリカに救済合併されるなど、米国金融業界の地図が数日間で塗り替えられた。まさに21世紀型金融危機であった。
そこからの教訓は生かされている。金融システムを通じた「連鎖倒産」のリスクを排除する仕組みが作られてきた。国際金融規制のバーゼルⅢは質も量も十分高い資本を銀行に要請。FDIC(米国連邦預金保険公社)はドッド・フランク法を通じて、大手行にリビングウィル(破綻処理計画)の策定・報告義務を課した。FRB(米国連邦準備制度理事会)はストレステストを実施して金融機関の資産の健全性を定期的に調査。ECB(欧州中央銀行)もストレステストを行っている。その結果、グローバルに重要な金融機関の資本状況は現時点で健全性を維持している。
しかし、危機自体に防止策はない。新たな危機の火種はすでにある。中央銀行によって供給された過剰流動性がどこにたまっているのかが、カギになる。信用市場から観察できる三つを指摘する。
第一に新興国市場である。米国の金利上昇が限定的で、中国の景気低下が緩やか、かつ原油価格が安定している場合には、金利の高い新興国への投資が堅調に推移する。しかし、米国発の貿易摩擦が激化するにつれて、加工貿易の世界的な縮小、中国の成長減速によるコモディティ需要の減退に注目が集まる。新興国から資金が引き揚げられ、ドルの需給がタイト化する。これが全般の成長鈍化と政治的な不安定を促す。今のところ、脆弱さが際立つのはトルコとアルゼンチンのみだが、この先の米国中間選挙の結果次第では貿易戦争に拍車がかかり、新興国の資産価格下落が広がる可能性はある。
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