トランプ米大統領がブレナン元CIA(米国中央情報局)長官から機密情報に対するアクセス権限を剥奪した。これを単にトランプ氏による個人的な復讐と考えるのは間違いだ。なるほど、ブレナン氏はロシアとの癒着が指摘されるトランプ氏の存在を「国家安全保障に対する脅威」と呼んで批判している。トランプ氏が個人的な仕返しに出たと考えるのも当然だ。だが、同氏は大統領に選出されて以降、一貫して情報機関を攻撃しており、今後も締め付けを強化してくるはずだ。ブレナン氏への一撃は序の口にすぎない。
一方、欧州でも権力を手に入れた極右政党が情報機関たたきに走っている。極右を長年にわたり監視してきた情報機関は、与党から目の敵にされる立場になったのだ。
オーストリアでは今年2月、ポピュリスト政党に所属するキクル内相の命令で、警察が情報機関に強制捜査を仕掛けた。クルツ首相率いる国民党は極右の自由党と連立を組むが、自由党はナチス親衛隊の残党が立ち上げた組織だ。
強制捜査の結果、情報機関の高官は降格された。しかし、その口実はあぜんとするような内容だった。なんと「北朝鮮を標的とした諜報作戦」が摘発容疑とされたのだ。
このような無茶をやってのけたオーストリアを、トランプ氏はうらやましく思っているに違いない。自身もロシア疑惑に対するモラー特別検察官による捜査を打ち切り、情報機関を屈服させたいと望んでいるはずだ。なにしろ、独裁政治を礼賛し、司法手続きを公然と批判するような人物である。捜査の手が迫るほど、情報機関をさらにきつく締め上げてくるだろう。
関連規定によれば、確かに大統領は、機密を漏洩しているか漏洩させるおそれのある人物に対して国家機密へのアクセスを拒否できる。しかし、ブレナン氏はこのような行為をいっさい行っていない。実際、ホワイトハウスが権限剥奪の理由に挙げたのは、ブレナン氏の「不規則行動」だった。その根拠薄弱ぶりには失笑を禁じえない。
この記事は有料会員限定です
残り 670文字
