ドイツの連立政権が揺れている。難民政策をめぐり、最大与党のキリスト教民主同盟(CDU)を率いるメルケル首相と、内相でキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー党首とが激しく対立、発足直後の政権は危機に瀕した。元ドイツ大使の神余隆博氏に聞いた。
──与党の友党同士の対立が表面化しました。
CDU、CSUの姉妹政党間の深刻な対立は戦後初めてのこと。EU(欧州連合)首脳会議で難民対策で一定の合意をし、連立政権内で2党が歩み寄ったが、ハンドリングを誤れば連立が崩壊する危険性があった。メルケル氏の求心力の低下は今後も避けられない。最悪の場合は連邦議会選挙(総選挙)の可能性もあるが、そうなると移民受け入れに否定的なポピュリスト政党のAfD(ドイツのための選択肢)が、連立政権に入っている社会民主党を抑え第2党に躍進する危険性がある。メルケル政権が崩壊すればEUの結束にも深刻な打撃となる。
──昨年秋の総選挙後、連立協議に半年近くを費やしました。
今回は戦後最長となる空白期間が生じたが、政権協議に数カ月以上かかるのは珍しいことではない。主要政党は政権を担う責任を自覚しているからこそ、議論や駆け引きを通じて、自党の公約を政策文書に盛り込もうと尽力する。
──在任12年以上と長期政権となったメルケル政権に対する「飽き」があるともいわれています。
今のところ、メルケル氏に代わる有力な政治家はいない。存在感、能力、責任感などで匹敵する政治家はいないだろう。一方で、賞味期限切れといった側面はある。それはメルケル氏自身が自覚しているはずだ。実は2016年ごろ、メルケル氏自身は辞任を考えたフシがある。しかしトランプ氏が米大統領選で勝利しEU内でも排他的な動きが強まるにつれ、辞めるわけにはいかないと考えたはずだ。自由主義の担い手として自らを鼓舞するところがあったのではないか。
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