先日、あるブックカフェに立ち寄ったら、『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン)を見つけ、懐かしくなって読み返した。2001年の年間ベストセラーとなったビジネス書で、古い事業へのこだわりを捨てて新しい事業を求めることの重要さを寓話の中で扱った本だ。ストーリー展開の単調さが気になったが、当時の長期不況真っただ中で勇気を奮って新しい事業に飛び込まねばならなかった日本のビジネスパーソンにしばし思いを馳せた。
ビジネス書の世界ではその後、『脳を活かす勉強法』(茂木健一郎)、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海)、『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健)などのベストセラーが登場した。アドラー心理学を紹介する最後の本はビジネス書では異色だが、他者による承認ではなく自分の主体性を確立する必要性を説く部分は、会社組織の中で個人としてどう振る舞うかという問題につながる。こうした広い守備範囲はビジネス書の大きな特徴で、経済の解説のみならず、組織論、仕事術・勉強法から人生論まで、工夫を凝らして読みやすい形で提供している。
ビジネス書は、その時代に即応した生き方や働き方のヒントを提供してきた。また、働く人々の共通の話題としての役割も大きいのではないか。もちろん、時代に即応した結果として、ビジネス書の寿命は一部の例外を除いて短い。多くの人にとっては、ビジネス書はじっくり読む対象ではなく、さっと読んで情報を得る対象として消費されている。これは決して悪いことではなく、筆者もビジネス書とはそのように付き合うのが一番だと思っている。
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