5月下旬、欧州金融市場に動揺が走った。5月中旬まで2%程度だったイタリア国債の10年物金利が、一時3.5%近くまでハネ上がり、逆に0.6%台だったドイツ国債の10年物金利が、「質への逃避」で買われて、一時0.2%割れまで急低下した。イタリアでポピュリスト政権成立の可能性が高まり、2010〜12年の欧州債務危機における「ユーロ崩壊」の懸念が、再燃したのだ。
しかし、現実にはイタリアの「ユーロ離脱」は英国の「EU(欧州連合)離脱」よりはるかにハードルの高い話である。数日間で1.5%ポイントに達する国債金利の急騰は、現実に起こりうる事態に比較して、極端すぎる動きといえる。
その意味で、今回の突発的な動きは、2月に起きた米国株価急落とも相通ずるところがあるように思える。すなわち、政治やファンダメンタルズの動きが一種のトリガーを引く形で、経済の実体以上に、短期間かつ大幅に市場が振れたという点においてである。こうした動きが生じる背景には、主要国による長く続いた空前絶後の金融緩和が、縮小し始めている影響があるのではないか。
17年度に本邦投資家は米国債から欧州債へ約6兆円もの資金を移していた。それ以前の2年間で米国債の保有を26兆円強も増やした実績との比較ではまだ抑制的な動きといえるが、欧州債の国ごとの規模を考えれば、6兆円という数字はかなり大きい。この資金シフトを促したのは、FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げによるドルヘッジコストの上昇であった。
昨年度、欧州で本邦投資家が主に資金を振り向けた先は、フランス、ドイツ、スペインであり(それぞれ3.1兆円、1.4兆円、1.0兆円)、イタリア債はほとんど購入していない。本邦投資家の売却が今回のイタリア国債金利の急騰を招いたということでは、おそらくない。しかし、たとえば、スペイン国債(10年物)の対ドイツ国債スプレッド(利回り差)は、危機後におおむね1.0〜1.5%ポイントだったものが、4月には0.6%ポイント台まで縮小していた。そのようなユーロ債全般への強い需要が波及した結果、総選挙後の4月のイタリア国債も、対ドイツ国債スプレッドが債務危機後のレンジ下限に近い1.1%ポイント台まで縮小していた。
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