「おまえ、何でそんなこともできねえんだ? 何度も同じことを言わせるな! 連帯責任だ!」
私は30年ほど前、日本体育大学から海上自衛隊へ入隊した。要は、体育会系から軍組織へ行ったので、こんなせりふは耳にタコができるくらい聞いたし、正直、自分でも口にした。そして、この後に体罰が待っているのは当たり前のことだった。
新年度に入ると、街中では真新しいスーツを着たまだ幼い顔の若者たちが目立つ。不思議なもので、梅雨が終わり、夏を迎える頃になると、こうした若者の姿がまったく見られなくなる。いい意味でも悪い意味でも、彼らが新しい環境に溶け込んでいくからだ。
いい意味とは、生活リズムや新しい人間関係に慣れることだ。悪い意味とは、新鮮な感性が薄れ、気づきがなくなってしまったり、入社当初のモチベーションが下がって、大勢に流される習慣がついてしまったりすることである。
かつて私も彼らのような表情で、新天地に向かったことが何度もある。最初は、茨城の県立高校を卒業して日体大の合宿所に向かったときだ。海上自衛隊に入隊してからは、ほぼ毎年転勤があったので、3月末には同じ気持ちになった。もっとも会社員ではなかったので、スーツを着て街中ではなく、初めはセーラー服、後は幹部の制服を着て、自衛隊の桟橋を歩いていた。不安と希望が入り交じった感覚はよく覚えている。
今でも鮮明な記憶としてよみがえるのは、冒頭に書いたような叱責が頻発する独特な場の雰囲気である。だが、これも梅雨が明ける頃にはなくなっているものだ。そう長く続くことはない。
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