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「インフレ懸念」とは何なのか 市場の動揺誘った1月の米国雇用統計

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  • 森田 長太郎 オールニッポン・アセットマネジメント執行役員/チーフストラテジスト、ウォールズ&ブリッジ代表
もりた・ちょうたろう●慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券を経て2013年8月から現職。日本国債市場での経験は通算で20年超。グローバルな経済、財政政策の分析などマクロ的アプローチに特色。(撮影:大澤 誠)

2月に米国発で生じたグローバル株式市場の動揺は、賃金を起点とする「インフレ加速」によって「ゴルディロックス」(適温経済)のバランスが崩れるのではないかとの懸念が浮上したことが大きかったとされる。

そういった懸念を一気に加速させたのが1月の米国雇用統計で、平均時給の伸びが速報値で前年比プラス2.9%と高まったことであった。だが、今月上旬に発表された2月の数値は同プラス2.6%へと鈍化した。

しかし、1月のプラス2.9%という数値も、現在の4%強の失業率との関係で見れば、まだ明らかに低い。米国の失業率は歴史的に見てすでにかなり低い水準にあるが、過去には、この失業率水準での賃金上昇率は少なくとも4%は超えていた。いわゆる賃金版の「フィリップス曲線」(=失業率を横軸、賃金上昇率を縦軸に取ってグラフを描くと負の相関を示す)の形状はかなりフラット化しており、これがゴルディロックスの根底にある。

年初来の米国長期金利の上昇や2月の米国株急落が「インフレ懸念」を反映したものだとするなら、市場は、このフラットなフィリップス曲線が今後、何らかの理由で変化していくことを予想したことになる。

市場は、フィリップス曲線が現在のフラットな傾斜から徐々に過去の傾斜に戻ることで、賃金上昇率が従来の4%、5%といった水準に段階的に上がっていくシナリオを想定しているのだろうか。あるいは、失業率が自然失業率(インフレ率に関係なく、完全雇用の状態でも発生する失業の率)まで低下してもなお景気が刺激され続ける結果、フィリップス曲線は垂直化して賃金上昇率が突然高まるシナリオを想定しているのだろうか。市場が何を「懸念」しているのかは実は不明瞭である。

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