この8月から9月にかけて、北朝鮮の核実験・ミサイル発射で、かつてなく半島周辺の緊張は高まった。何かやっていないと落ち着かないのか、北朝鮮・金正恩委員長は、とにかく勤勉である。おかげで次から次へと局面が変化し、怠惰な小欄ではとてもついていけない。
だから核・ミサイルをめぐる論評は、ひとまず断念した。それでも目にとまったのは、例の北朝鮮の威嚇声明である。
いよいよ非難・威嚇が日本にも直接およんできた文面で、日米の分断を画策する目的とおぼしい。だが注目したいのは、もっと細かい措辞にある。
侮蔑語を使った声明
「米国の制裁策動に便乗して軽率に振舞った日本の島国夷に対する指弾の声も激しく出ている。千年来の敵であるウェノムのざまを見るほど目に火がつくようだ。」
これは9月13日の朝鮮中央通信が朝鮮アジア太平洋平和委員会の声明を伝えた文面、日本語版をそのまま引いた。オリジナルのほぼ直訳のようで、たとえば「島国夷」「ウェノム」というのは、日本人に対する侮蔑語にほかならない。
英語版も中国語版もあるけれど、そちらは直訳ではない。中国語は「小日本」、英語は「Japs」とある。おなじみの蔑称であって、英語・中国語の読者にはとてもわかりやすい。その代わり、オリジナルのニュアンスは消え失せている。
日本語版だけ直訳的な措辞なのが、何ともおもしろい。当の日本なのでふさわしい日本語の蔑称が存在せず、原語に近い語句をぶつけようと思ったのか、それとも日本人にも通じると思ったのか。
筆者にはそのあたり、寡聞にして知らない。でもひとつ奇妙に思えたのは、日本語版作成者の漢字感覚である。「ウェノム」は朝鮮語そのままのカタカナ表記で、こう書かれても、ほとんどの日本人はわかるまい。漢字に直せば「倭奴」であり、これでようやく当たりがつく。典拠はもちろん古代中国の史書に出てくる「倭奴国」のこと、小欄第41回でも紹介した用語である。
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