「お前たちは部品なんだ。いっさい考えるな。何も付け加えず、見たままを報告しろ」
これは、私が海上自衛隊に入隊し、最下級兵士として戦闘艦艇に配属された当日に言われた言葉である。
いにしえの頃より船に乗って戦闘をしてきた海軍には、文化ともいえる二つの大きな特徴がある。
一つは、「船頭多くして船山に上る」ということわざを重要な教訓としていることだ。
身体に例えれば、指揮官がたった一つの脳で、ほかの者は知り得た情報を脳に伝え、脳が決めたことを実行する身体の部位だといえる。だから、見たままを報告して指示どおりに行動するよう、厳しくしつけられる。
そのため、海上自衛隊には、幹部のミスを下士官が気を利かしてカバーするケースが生まれがたい面がある。「どうして〇〇しなかったんだ!」と幹部が言っても、「指示されていません」と下士官が言えば済むからである。
情報を的確に選別する
逆に「何で勝手に〇〇したんだ」と幹部に言われたら、たとえよかれと思ってしたことでも下士官は黙るしかない。実際には「〇〇したほうがいいですよ」と幹部に言う下士官もいるし、私は幹部として度々そうした助言に救われた。だが、全体的な傾向は上意下達が非常に強い文化なのである。
見たままを報告し、指示どおり動く姿勢を強く求められるのは、年齢や階級が下の者たちの場合である。幹部や上級下士官の指揮官に対する報告のやり方は別だ。
指揮官には、多方面からすべての情報が集約される。そのため、直下の部下が知り得たことをそのまま報告したら、受け取る情報量が多すぎて頭がパンクする。
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