海上自衛隊の特殊部隊の数名が、陸上自衛隊のレンジャー教育を初めて受けたときのことである。訓練後に私は、世話になった陸自の教官と話をした。
「生意気を言わせてもらうと、教わったことをうちの隊員に教育しますが、すぐに終わると思います。問題は次のステップです」
「では、うちと次をやりましょう。本来のレンジャー訓練です。今までは常識の範疇ですから」
その後、彼の率いるレンジャー小隊と頻繁に合同訓練を行った。これは陸自と海自の枠を超えて行う訓練で、正規にやろうとすれば煩雑な手続きが必要で実現しにくい。そのため、われわれはコソコソやっていた。だからこそ、訓練現場に私と彼がつねに居合わせることは絶対条件だった。
だがある日、人里離れた山中で、約束の時刻に決めた手続きで会合してみると、彼がいない。私は若いレンジャー隊員に尋ねた。
「レンジャー小隊長は?」
「明後日に接触する別のグループに同行しています」
「彼がいなくて、どうするの?」
「ここは私が統制しています」
「訓練項目の変更が必要なのだが、小隊長と連絡は取れるの?」
「取れません」
「どうするの?」
「私が判断します」
絶句した。まだ20代の彼は、小隊長から権限を委任されていると言う。ありえないと思った。
小隊長には絶対の自信
二日後、小隊長と接触した。
「なんでいなかったの? 確かに彼は優秀だったけど、おかしいでしょ!」
「問題がありましたか? あいつで十分対応できたはずです」
「できたけど……」
「任務分析させていますので、問題はなかったはずです」
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