「あなた何がしたいの? あなたは軍人でしょ?」
私は42歳の時、特殊部隊から艦艇部隊への転勤を断り海上自衛隊を辞めて、フィリピンのミンダナオ島に住みついた。そこで海で生まれ育った海洋民族の若者に出会い、水に関する生活術、戦闘術に驚愕し、トレーニングパートナーとして雇った。弟子と言ってはいるが、水に関することのほかに、射撃やナイフ、素手での格闘など多くのことを教わった。その若者は20歳そこそこの女性であった。
現役の特殊部隊員の時は、米国をはじめとして各国の特殊部隊員と訓練し、情報交換もした。だが、彼女を知ってしまうと、彼らと交わした会話が戯言のように思えてくる。
島へ来てから半年が経過した頃、彼女に手首の関節技をかけると不思議そうな顔で、何がしたいのかと聞かれた。手首を締め込んでいくと、「相手の命を取りたいんじゃないの?」と。これ以上締めると骨折してしまうところまで締めた。
「痛くないのか?」
「最初から腕なんて捨ててるわよ! 肩から先は切り離して考えてるわ!」
「……」
「相手を骨折させて、いったい何になるのよ! 命を取りたいなら、相手の目と頸動脈と心臓を壊しなさい」
「……」
「バカじゃないの! 攻撃もガードもできる大切な手を両方とも使って、どうでもいい手首を骨折させるって、頭がイカれてるわ!」
「……」
「今、私は片手がフリーよ。それなのに、あなたは両手を私の手首を骨折させることに使っている。だから目と頸動脈と心臓すべての急所がガラ空き」
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