2010年2月、私はカナダのバンクーバーにいた。オリンピックの日本選手団を警護するためである。女子フィギュアスケートで浅田真央選手が韓国のキム・ヨナ選手に敗れ、銀メダルとなった、あの大会だ。
開催期間も残すところわずかとなったある日、日本オリンピック委員会主催のパーティに関する調整会議が行われた。このパーティは国際オリンピック委員会の大物や地元のVIPらを招待するもので、私は不審人物を侵入させないことや爆破テロなどの阻止、VIP到着時の警護を担当していた。
当日は地元警備会社の警備員十数名が私の下に配置されることになっていたため、調整会議には警備会社の副社長が参加した。私はそこで副社長に警備要領を説明するよう言われていた。
説明は4項目に絞った。
1.警護対象:どこにいる誰を警護しなければならないのか。
2.指揮系統:警備員が最優先すべきは私の指示。ほかの人からのものは依頼と理解し、私からの指示を逸脱しない範囲で対応する。
3.警護方針:10名は制服で警備を行い、残りの5名はスーツを着用。それぞれが平時と緊急時で任務を切り替える。
4.各人の任務:平時に制服組は、パーティ会場に不審人物を入れないこと。緊急時の任務はパーティ会場からの避難誘導。スーツ組の平時は、会場に侵入しているかもしれない不審人物の発見、緊急時の任務は当該者への直接対応。
「あとの細かいことは当日警備員に直接話します。華のあるハンサムな警備員を頼みますよ」と言うと、副社長は「こんな警備計画は聞いたことがないが、合理的でよくできている。しっかり理解できた」とニッコリ答えた。
この記事は有料会員限定です
残り 585文字
