2016年は、大方のメディアや専門家の予想を裏切る、二つの世界的出来事が生じた年として歴史に残るだろう。英国のEU離脱とトランプ氏の米大統領選挙での勝利である。6月に行われた英国の国民投票では、EU残留派が勝つと思われていたのに、離脱派が多数を占めた。11月の米大統領選挙でも、当初は泡沫候補と見なされていたトランプ氏が当選した。いずれも、市民の良識や理性的判断に基づく投票行動を期待していた専門家の予想を裏切る結果となった。
その一因を、比較的学歴の低い、知識や理性的判断の不十分な市民による反知性主義(あるいは知的エスタブリッシュメントへの反発)の表れ(=偏見に基づく感情的反応)だとする見方がある。この見方に立てば、これら予想外の結果は、すべての国民に十分な知識を与え、理性的判断ができる能力を育成することを目指してきた「教育の失敗」ということになる。
先進国で行われる教育を支える基本的価値は「正しさ」にある。差別や偏見のない社会を作ろうという「正しさ」、より正確な事実や真理に基づく知識の提供という「正しさ」、個人の良心や信条に沿って生きることを勧める「正しさ」など、いわゆるポリティカルコレクトネスを含め、現代の教育は「正しさ」を前提に行われる。そして多くの人々がそのような教育を受け、正しさの価値をまずは受け入れる。その意味で、教育は失敗していない。
問題は、正しさが裏切られる現実を生きなければならない人々、あるいは、正しさによって庇護される人々に比べ、自分たちは利益を失っていると感じる人々が増えていることにある。別言すれば、建前より本音、机上の正しさよりそれぞれの現実に根差す判断を信じる人々の増加にある。
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