かの「オマハの賢人」、ウォーレン・バフェットがこよなく愛した銀行である。ウェルズ・ファーゴ。日本での知名度は今一だが、一枚看板は「個人客ファースト」。投資銀行業務に距離を置き、金融危機もほぼ無傷で乗り越えた。つい最近まで時価総額世界一の銀行だった。
悲しいかな、看板に偽りがあった。顧客に最も愛されている証しは、一人が平均六つ以上の口座を開いていること。ところが、実に200万口座が客に無断のまま勝手に作られたニセ口座であることを検察当局が明らかにした。
背景にあったのは、過酷なノルマだ。「クロス販売」と称し、同じ顧客に複数の金融商品、複数の口座を売り付ける。英米紙によれば、1時間ごとに本部から目標達成度のチェックが入ったという。
ジョン・スタンフCEOの言い草がいい。「不正を奨励した覚えはない。企業文化を理解しない一部行員がやったこと」。スタンフ氏は2010年、顧客一人当たり口座目標を8に設定した。「8(エイト)はグレイトと韻を踏んでいる。さぁ、今度は10やろう、という気分になる」。
びっくり仰天は、CEO就任以来、スタンフ氏が手にした報酬総額だ。何と2.5億ドル(258億円)。10月に辞任したが、王侯貴族もうらやむ余生が待っている。
自分の報酬のためなら何でもあり。顧客第一主義が「経営者第一主義」にすり替わってしまう怪談は、しかし、米国に限った話ではない。
現場にたまるマグマ
月刊『ニューリーダー』9月号が「株主におもね、強まる自己愛。日本の賃金が上がらない理由」と題する記事を載せている。この5年間、売上高1兆円以上の100社の営業利益は32%伸びたが、従業員の平均給与はたった4.5%増えただけ。反対に、目覚ましいのは配当総額の伸びだ。75%も増えている。
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