米大統領選で共和党候補指名を争う不動産王ドナルド・トランプ氏の躍進に、人々は興味と恐怖が混じった反応を見せている。
当初は嘲笑の対象だった同氏の選挙活動だが、最近ではミシガン州やミシシッピ州の予備選などで快進撃を続けている。トランプ現象をどう説明すべきか、専門家たちは四苦八苦しているが、最適な比較対象がある。イタリア首相を3期務めたシルビオ・ベルルスコーニ氏だ。
両者には複数回の離婚歴や実業家であるといった共通点がある。もっと重要な共通点は、内容の不足を話術でごまかす能力、注目を集めるためならうそも辞さない姿勢、批判的な人々を黙らせようと躊躇なく脅すやり口である。
ベルルスコーニ氏の政策には一貫性が欠如しており、選挙戦では票獲得のため過激な発言も辞さなかった。彼の政治目的は、自らの事業の利益または保護だった。
トランプ氏も同様だ。仮に彼が大統領の座に就くと、どんな事態が待ち受けるのか。米国憲法は政治の暴走を防ぐ機能を備えるが、民主主義の強力な武器は世論操作でもある。ベルルスコーニ氏同様、トランプ氏はその武器の扱いに長けている。
ベルルスコーニ氏はイタリアの主要民放チャンネルと日刊紙数紙を所有し、メディアと世論の操作によって影響力を保持した。イタリア国民は政治への信頼が低いことで知られるが、ベルルスコーニ氏はその国民感覚をさらにマヒさせた。2008年の世界経済危機以降も、同氏はイタリア経済が順風満帆だという明らかに現実とは違うことを国民に信じ込ませた。本来なら政府が率先して重要な改革に手をつけるべき時期に、同国では無為な時間が流れてしまった。
それでもベルルスコーニ氏が国民に支持された理由には冗談や虚構、笑顔といった要素が挙げられる。加えて同氏は名誉毀損訴訟などの脅しにも頼った。自らの主張に批判的な人々を黙らせる手段として、彼ほど名誉毀損訴訟を用いた人物を私は知らない。反マフィアで知られる作家のロベルト・サヴィアーノ氏は、ベルルスコーニ氏が自身の邪魔になる者は誰であろうがその名を汚そうとした様子を指し、「泥マシーン」と形容した。
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