消費税率を10%に引き上げるのに伴い食料品などへ軽減税率を適用しようという議論が進んでいる。この議論を眺めていると、これはつくづく世にも珍しい経済政策だと思わずにはいられない。
第一に、経済学者がほぼ全員反対している。アベノミクスにせよ格差問題にせよ、経済学者の意見は一致しないのが普通だから、これほど意見が一致するのは珍しいことだ。
経済学者がこぞって反対する主な理由は次のとおりだ。まず、高所得者のほうが高価な食品を食べるので、食料品に軽減税率を適用すると、高所得者ほど得をする金額が多くなってしまう。低所得者のための所得再分配政策としては極めて効率が悪い。
また、どこまでを軽減税率の適用対象にするかという線引きが難しい。実務的な混乱が起きるだろうし、「軽減税率の対象にしてほしい」というレントシーキング的な活動も生まれやすくなる。そして、肝心の税収がその分減ってしまうから、財政再建や社会保障制度安定化への歩みが阻害されてしまう。
この程度の理屈は誰にでもわかるはずだから、経済学者の意見が一致するのは当然なのである。
第二に、これほど専門家が反対している政策が実施されようとしていることも珍しいのではないか。「この辺は景色がいいから、一見すると住宅適地のようですが、地盤が弱いので建てるのはやめたほうがいいですよ」と専門家が忠告しているのに家を建ててしまうようなものだ。
つまり、経済学者の意見を無視して経済政策が行われようとしているということである。こうしたことを避けるために経済財政諮問会議のような場があるはずだが、諮問会議がこの問題に口をつぐんでいるのはどうしたことか。これは、政策当事者である首相や財務相がメンバーになっているからかもしれない。諮問会議はもっと独立性の強い第三者機関への道を模索したほうがよさそうだ。
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