8月11日の切り下げ以降、人民元相場への注目が高まっている。人民元相場と中国人民銀行の金融政策運営の関係を読み解くうえでは、「国際金融のトリレンマ」の基本に沿って考えると、論点を整理しやすい。
「国際金融のトリレンマ」とは、国際金融において、「独立した金融政策」「自由な資本移動」「安定した為替相場」の三つを同時に実現することはできないとする命題である。
過去の中国は「自由な資本移動」を封印したうえで、「独立した金融政策」と「安定した為替相場」を確保する道を歩んできたが、近年では「自由な資本移動」を徐々に認める傾向にあった。これは三つの総取りともいえる状態だった。だが、結局は「独立した金融政策」と「安定した為替相場」の両立が難しくなり、大幅切り下げに至ったのである。トリレンマの制約は重い。
今の中国で起きていることを簡単にまとめれば、まず人民銀行が景気減速を受けて「独立した金融政策」としての緩和措置を行っている。だが、そうした緩和措置は「自由な資本移動」を認める以上、資本流出とともに人民元安を招く。それゆえ、「安定した為替相場」を確保するために人民元買い・ドル売り介入を行うことになる。この状況は外貨準備が続くかぎりは持続するが、いかに巨額とはいっても外貨準備は有限であるため、やはり将来は三つのどれかはあきらめるときが来る。
今後の中国の選択肢としては、大きく分けて以下の二つが考えられる。まず、金融政策の独立性を放棄したうえで為替の安定を守る選択肢。もう一つは、金融政策の独立性を確保したうえで為替の安定を放棄する選択肢だ。
「為替の安定」いつ放棄?
ちなみに、三つ目の選択肢として、資本移動を制限し、金融政策の独立性と為替相場の安定を確保する道もある。が、この期に及んで資本規制を強化することは中国政府が標榜する人民元国際化の流れに逆行する。この点、9月1日に人民元売りの為替予約に関し、人民銀行が資本規制強化を発表したことは意外だった。だが、国家方針を念頭に置けば、このような規制強化策が今後の主軸を担っていく可能性は低い。
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