異次元緩和開始から2年。「銀行券+日銀当座預金」で定義されるマネタリーベース(以下MB)は急増を続け、まもなく名目GDPの6割を超える勢いだ。それでも、消費者物価の前年比は原油安もあってゼロ近くに下がり、一部で主張された「MBを増やせば予想物価上昇率が上がる」との説が成り立っている様子もまったくない。その説明としては、超過準備への付利が行われたことでMBが変質し、上記の会計的な定義によるMBは本来の性質を失ってしまったというのが、最も本質的ではないかと思う。
まずMBとは、もともと信用創造の土台(ベース)と位置づけられる。しかし、短期金利がほぼゼロとなって以降、MBが増えても信用乗数(マネーストック/MB)が低下して、なかなかマネーが増えない状態が続いていた。まして今はMBの大半を占める超過準備に市場金利より高い利子が払われるため、MBを使って貸し出しを増やすインセンティブは存在しない。だから、信用乗数はますます低下の一途なのだ。
MBのもう一つの重要な意味は、MBの増加が政府に通貨発行益(シニョレッジ)をもたらすという点にある。これは、MB=銀行券と考えれば(かつてはおおむねそうだった)、銀行券は無利子でも民間に自発的に保有され、償還義務もないところから生じる。この点を理解するには、政府と中央銀行の統合バランスシートを考えるとよい。たとえば、日銀が民間から国債を買って銀行券を発行したとしよう。国債には利子を払う必要があるが、銀行券は無利子だから、その分政府の負担が減る。それが通貨発行益になるというわけだ。
しかし、当たり前だが、MBに利子を払えば通貨発行益は発生しない(超過準備への付利は現在0・1%だが、2%インフレが達成されれば2%以上になる)。この点を理解できないリフレ派には「日銀が国債を買えば、その分政府は儲かる」などと主張する者がいるが、それはまったくの誤解である。日銀が今行っているのは、長期国債を買って短期の有利子債務を発行し、政府+日銀の債務を短期化しているにすぎない(超低金利期に、固定金利の住宅ローンを変動金利に乗り換えるのと同じ)。
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