私たちはまた、母子世帯の子どもを一人失った。川崎の河原で尊い命を落とした男子は、母子世帯で育つ5人兄弟の一人であった。これまでも、火災や事故、虐待などの犠牲となった幼い命の多くが母子世帯の子どもであることに気づいた読者はいるだろうか。死亡だけではない。不登校、非行、学校の中退、低学力、健康の悪化。日本の母子世帯の子どもが育つ環境は過酷だ。
母子世帯の子どもの困窮は、日本社会にとって「小さな」問題ではない。日本の子どもの約8~12%は母子世帯で育っている。母子世帯はもう、特殊な家族形態とはいえない。
ある経済雑誌の記者が書いていた。このような事件が起きるたびに、「二度とこういうことが起きないように」「周りのオトナたちは、子供のサインにもっと気づかなくては」などと“ごもっとも”な意見を繰り返すが何も変わらないと。
まったく同感である。事件のたびに、「同情」は集まるものの、それは一過性のものであり、決して恒久的な制度や支援につながらない。「地域やコミュニティ」「周りのオトナ」が大事と言いつつも、自分自身の地域の困窮する子どもの現状を知ろうとし、支援の手を差し伸べる人は実際どれくらいいるであろう。
日本の社会はまず、母子世帯の貧困率が50%を超え、かつ悪化していることを知るべきである。2009年から12年にかけて、大人が一人かつ子どもがいる現役世帯の貧困率は50.8%から54.6%に上昇した。母子世帯の年収は、平均で243万円。200万円未満が47%にもなるのである。無理もない。母子世帯の母親の非正規労働割合は長年増加しており、06年から11年にかけて49%から52%となった。収入を増やすため、母子世帯の多くは2、3の職をかけもちし、少しでも賃金が高い夜の仕事を引き受ける。体も心もボロボロとなり、子どもと向き合う時間的、精神的余裕も持てない。
この記事は有料会員限定です
残り 720文字
