その真偽は不明だが、市場はサウジアラビアの石油戦略の何かが変わったとの思惑を強めている。2014年11月末のOPEC(石油輸出国機構)総会での減産見送りの後、原油価格は1バレル=70ドル台を割り込んで下落。足元では約5年半ぶりの安値圏である60ドル前後での推移となっている。
通常、原油安は経済と株価にとってプラス材料と見なされる。だが今回は、14年7月に原油相場の下落が始まった頃から、米国の社債市場でジャンク債と呼ばれるような低格付け社債を中心に信用スプレッド(利ザヤ)の拡大が始まり、新興国のうちではロシア市場が厳しい売り圧力にさらされることになった。
OPEC総会後は、ロシアに加え、中南米ではメキシコやコロンビア、アジアではマレーシアなどの産油国通貨にも売りが広がり、固定為替相場制を採用しているカザフスタンやベネズエラのような国もCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が急騰した。また、近年、急速にエネルギー大国化してきた米国では、MLP(共同投資事業形態の一つ、出資持ち分を上場)など、主に資源インフラ開発の資金調達のために発行された証券類が値崩れする事態が発生した。
原油相場が採算ラインと目される水準を下回る懸念が出てきたことで、産油国やエネルギー関連産業の中で、財政基盤が脆弱な国や企業に対する信用リスクの再評価が始まったのである。世界的にリスク回避志向が強まり、12月前半には米国株や日本株も急落することになった。1ドル=120円台を超えていたドル円相場は、一時的に115円台まで押し戻された。
長期では円高要因
さて、その原油安だが、円高要因と見るべきか。それとも円安要因と見るべきか。
ファンダメンタルズから長期的な影響を考えると、輸入減少に伴う貿易収支や交易条件の改善を通じ、明らかに円高要因になるとみられる。交易条件とは輸出物価を輸入物価で割ったもので、エネルギー輸入の多い日本の場合、事実上、交易条件は変動の大きい輸入価格によって決する。図表1のとおり、原油高で交易条件が悪化するときには趨勢的な円安が進行、逆に原油安で交易条件が改善する際には円高の進む傾向が明確だ。
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