小学生「手を挙げる回数」にノルマ科される異様 「もう学校へ行きたくない」と言う11歳少女
友梨さんはこの日、副校長との面談のため学校へ行っていた。そのとき偶然、紗季さんの体育の授業を目撃したという。
「校庭を見ると娘のクラスが体育をしており、100メートル走をしていました。走りきれない子もいましたし、足がふらつく子もいました。娘もいつもも違う様子でした。授業の終わりには水分補給をしないまま教室へ戻って行きました」(友梨さん)
連日30度を超える日々が続き、1日中マスク姿。紗季さんの身体は限界を迎えていた。1学期からのストレスがたたり、帰り道に具合が悪くなり、帰宅後に倒れてしまう。そしてついに、紗季さんは翌日9日から現在に至るまで、完全に不登校となってしまった。
いじめという“二次被害”
このような出来事から、友梨さんは娘の異変やストレスの原因などをまとめ、「事実報告書」を学校に提出。さらに友梨さんはある市議会議員にも現状を伝えた。
市議会では紗季さんの学校について問題があるとし、市教委を問いただした。すると指導課長は、体育の授業での配慮について、「校庭でマスクを外し、十分な呼吸量で授業をすることになっています。準備運動後、運動と運動の間、振り返りの間、1回だけでなく、複数回の水分補給をするように教員が声をかけるようにしています」と述べたという。
また、不適切な指導がなされた場合の対応については「まずは事実かどうかを確認する必要がある。学校を訪問し、授業を観察し、聞き取りをします。その結果、不適切な指導を確認できた場合、指導と助言をします。その後の変化についても、校長から報告をさせて、必要な場合は、再度、指導をします」(指導課長)とのことだった。
筆者は直接、市議会で問題提議をした市議に話を聞いてみた。
「事前に質問内容は伝えており、指導課長は一般的ではありましたが、ギリギリの答弁をしてくれたと思っています。議員としては、直接、教育現場には介入できませんが、お子さんが心配です。早く課題を解決し、学校に復帰できるようにしたい」
しかし、紗季さんが早く学校へ行けるよう市議会も市教委も最善を尽くす中、“二次被害”は起きてしまった。
10月中旬、紗季さんの家の郵便ポストの中に、「コンビニにいたでしょ? さぼりなの?」「どうしてズル休みするの?」「勉強できないから来ないの?」などの、メモが投函されていた。誰が書いたかは不明だが、友梨さんは「いじめではないか」と判断し、学校に報告。市教委も把握している。
市教委に取材をすると、「『事実報告書』は受け取っています」としながらも、解釈の違いがあるのでは、という。例えば、
「挙手の回数については、子どもたちとの話し合いの中でできた、と聞いています」とし、認識が食い違う部分もある。しかし、「親御さんとは必要に応じて話し合いを重ねていきます」と述べた。また学校も同様に「市教委と連携をとりながら話し合いを進めていきます」と答えた。
両者の言い分が食い違っている部分があるが、まずは事実の把握が大切だ。両者での話し合いと並行しながら、何よりも子どもの学習面と心のケアが重要。
すべてをコロナのせいにはできないが、現代の子どもたちの心はさまざまな悩みを抱え、大人たちにSOSを出している。未来のある子どもを支えていくために、大人がすべきこととは――。学校、地域、市議会、そして親のその後に注目したい。
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