京王「16年ぶり新車」は沿線勢力図を変えるか 来春から座席指定列車、相模原線は値下げ

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鋭角な先頭形状が特徴の5000系(撮影:尾形文繁)

座席指定列車が運行を開始する来春は、ライバル路線にとっても大きな変化の季節となる。新宿―多摩センター間で競合する小田急線の複々線化完成だ。

複々線完成後、朝ラッシュ時の小田急多摩センター―新宿間の所要時間は現在より5分短い約40分となる見込み。京王線は約50分かかっており、一刻を争う朝の所要時間ではだいぶ差がつくことになる。

以前は京王に大きく引き離されていた小田急多摩線だが、2016年度の小田急多摩センター駅の1日平均乗降人員は初の5万人台を達成。京王多摩センター駅の約8万7000人とはまだ3万人以上の開きがあるとはいえ、かつては京王の半分に満たなかった小田急が6割近くまで追い上げている。

京王は座席指定列車の導入について、利用者アンケートで要望が高かった着席のニーズに応えることが主目的としている。だが、「近隣他社の動向をまったく意識していないかといえば、それはウソになる」(山木さん)。ダイヤにもよるが、来春以降は「朝速い小田急」vs「帰宅時に快適な京王」という競争の構図が生まれそうだ。

相模原線は来春運賃値下げ

一方、京王は座席指定列車以外にも強みになりそうな点がある。2018年3月に予定している相模原線の運賃改定、簡単にいえば「値下げ」だ。

調布から多摩センターを経て神奈川県の橋本までを結ぶ相模原線は、建設事業費を回収するため、京王多摩川―橋本間、また同区間とほかの区間をまたいで乗車する場合には通常の運賃に加え、距離に応じて10~80円の「加算運賃」が上乗せされている。これを引き下げる(一部廃止)ことで、最大20円の値下げを実施。新宿―多摩センター間の運賃は現在の339円(ICカード利用の場合)から319円となり、370円かかる小田急より約60円安くなる。

加算運賃の引き下げを行うのは事業費の回収が進んだためで、2016年度末時点での回収率は90.6%。順調に進めば数年以内には回収が完了し、区間によってはさらなる値下げが可能になる。加算運賃の引き下げについて京王は「あくまで制度にのっとったもの」で他社の動向は関係ないと説明するが、小田急に対するアドバンテージの一つになるのは確かだ。

京王のライバルは小田急だけではない。当初予定の2020年度からは延期されたものの、新宿―八王子・高尾間で競合するJR中央線では快速電車にグリーン車を連結する計画が進行している。京王初の座席指定列車がデビューする来春以降、多摩地区の鉄道サービス競争が加速しそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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