「無痛分娩」で妻が死亡した夫が告白する心中

1歳の息子はいまだに意識不明

実は、このしびれは兆候だった。美樹さんのカテーテルはくも膜下にまで達していたが、医師も看護師もそれを疑うことなく本番の麻酔を投入。医師は再び外来へと戻った直後に美樹さんの容体が急変。気分不良、嘔吐、さらには子どもの心音も下がりだした。

「看護師も慌てだし、何が起きているのか私にはわからず、医師がやっと戻ってきたら、そのうちに救急隊が到着し、搬送されることになりました。妻の意識はなく、大学病院に着いたときには、母子ともに心肺停止でした」(大輔さん)

病院のずさんで不誠実な対応

適切な観察、迅速な連絡、対処があったら最悪の事態は防げたかもしれない。

「医師だけの問題じゃない。看護師も、みんなが異変を見逃し、急変したときの連携も遅かった」(前出・咲子さん)

事故後、謝罪はおろか、クリニックから事故の経過説明すらなかった。家族が開示を要求し、初めて実現したのだ。

しかし先月、事故のことが地元紙で報じられると代理人を通じ慌てて「謝罪したい」と言ってきたというのだ。

「私たちの家も電話番号も知っているはずなのに、直接連絡をしてきたことは1度もなかったんですよ」(大輔さん)

信じられないのはそれだけではない。事故後、大輔さんらが見たカルテに記載されていたのは「○月○日来院」と書かれた文字。事故当日の記録もほとんどなければ通院時の様子を記すものもない。

家族は、ずさんで不誠実な対応を目の当たりにした。

同クリニックは昨年、院長の医療ミスを認め、示談金を支払ったが、謝罪することなく今も妊婦を受け入れている。

「怒りは消えることはありません。どうか目の届かないところに消えてほしい。本当だったら今ごろ、1歳半になった子どもと家族3人で暮らしていたんです、妻と一緒に、ほらしゃべったとか、立った、とか喜んでいたのに……。悔しいです」(大輔さん)

今回、家族は「第2、第3の被害者を出してはいけない」と公表を決意。厚生労働大臣などにも無痛分娩の医療事故の実態調査などを要望した。

「私たちは無痛分娩を否定するわけじゃない。お産を考えている人は、食事や施設などの表面的なことよりも、医療としてのレベルやリスク管理、そして妊婦ひとりひとりに真摯に向き合ってくれている病院なのか。それを調べたうえで病院や分娩方法を決めてもらいたい」(大輔さん)

命を取り上げる医師の過失で家族は多くを失った。悲しみが残り、医師の怠慢さが癒えることのない傷を作った。

当該クリニックにも取材を申し込み1週間以上待ったが、連絡はなかった。

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