その3派のうち、ホワイトハウス内における共和党グループの勢力は変わっていない。その一方で親族グループが後退し、代わって反エスタブリッシュメントグループのスティーブン・バノン氏が復活している。
これは日本にとっても大きな影響がある。とくに通商政策上、厄介なことになりそうだ。
というのは、日米経済関係や貿易問題では、インディアナ州知事だったペンス副大統領がトヨタと関係が深いことから、日本にとって好都合だった。ところが、その役回りが実質的にウィルバー・ロス商務長官にバトンタッチされた。長年の知日派であるロス氏は日本のことを熟知している。それだけに、むしろ厳しい対日姿勢を示すことになりそうだ。
バノン氏復活でジャパンバッシングが再燃する
もっと厄介なのが、反エスタブリッシュメントグループのバノン氏の力が復活してくることだ。
バノン氏はトランプ大統領を陰で操る黒幕と米メディアに持ち上げられ、中東・アフリカ7カ国からの移民を規制する大統領令の最初の骨格を起草した人物として一躍有名になった。
その大統領令が連邦地裁によって差し止め命令が下され、持論の対中強硬策が北朝鮮問題をめぐって後退するなど、バノン戦略が政治的現実にそぐわなくなり、一時、バノン氏は国家安全保障会議(NSC)から外され、ホワイトハウス内でクシュナー氏との権力闘争に敗れた。3月から4月にかけては、いつ政権から放逐されても不思議ではないと米メディアで叩かれ続けてきたといえる。
ところが、「ロシアゲート」を契機に、これまでバノン氏を押しのけて前面に出ていたクシュナー氏が後退。バノン氏が内部権力闘争で再浮上してきた。現に、トランプ大統領は2020年の再選を見据えるキャンペーン作戦立案メンバーの1人にバノン氏を指名している。これはバノン氏の完全復活と見ていいだろう。
バノン戦略の根幹は、敵とおぼしき相手の悪口を声高に吠えること。トランプ氏は選挙戦中にそれを実践して成果を上げて選挙に勝った。その相手は直接的にはヒラリー・クリントン候補であり、勝利してからの相手はバラク・オバマ前大統領だ。
海外では中国、日本、ドイツなど貿易黒字国がターゲットだ。特に中国に対しては選挙戦中、さんざんに悪口を並べてきた。ところが、4月の米中首脳会談直後から豹変し、中国を為替操作国の認定から外すなど、矛先を引っ込めている。
盟友のバノン氏と再び距離を縮めたトランプ大統領は、今回の先進国サミット(G7)では、ドイツに対して悪口を言い続けた。ただ、ドイツは欧州連合(EU)の一角にすぎない。アメリカにとって最大の敵とおぼしき相手は中国をおいてほかにない。
ところが、朝鮮半島情勢が微妙な間は中国を相手に悪口を言えない。となれば、あとは日本しかないのである。ジャパンバッシング再燃の可能性がますます強まったといえるだろう。
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