「ニンテンドースイッチ」で任天堂は蘇るか おもちゃ業界でこの春一番の注目株

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任天堂オブ・アメリカのレジナルド・フィサメCOOは説明する。「動きを指示するためにテレビ画面が『あなたに話し掛け』、得点を記録し、誰が勝ったかを知らせる。誰が勝ちそうかといった画面の表示内容が見えるのはプレーをしていない人だけ。見学している人もゲームに参加している感覚が増えた。つまり一緒に遊ぶという点で、新しいゲームの在り方だ」

スイッチの初回出荷台数は全世界で200万台。滑り出しは好調だ。ターゲットは多くのゲームオタクたちだが、家族同士で遊び、年配のゲーマーも楽しめるように「いっしょにチョキッとスニッパーズ」のようなソフトも用意した。「スニッパーズ」は「スニップ」と「クリップ」というキャラクターを操作して、パズルを解いていくもの。最大4人まで一緒に遊べる。

ようやく任天堂が、ゲーム製作者たちをもう一度わくわくさせてくれたようだ。スイッチ向けには、60社以上のゲーム販売会社や開発会社が100種類以上のゲームを製作中。任天堂と初めて仕事をする会社もある。

この春一番の注目株

スイッチは柔軟性があるので、ゲーム製作者は室内で遊ぶスタイルと携帯して遊ぶスタイルの両方を検討できる、とゲーム開発・販売会社のアクティビジョン・パブリッシングのジョシュ・タウブ上級副社長は言う。「子供たちは家でも、車の後部座席や飛行機の中でも同じように素晴らしい体験ができる」

開発者に支持されるかどうかは、任天堂にとって決定的に重要だ。Wiiの1億台以上のヒットで他社を圧倒したものの、後継機のWiiUは約1350万台と苦戦(現在は生産終了)。

WiiUには数々の失敗があった。Wiiより高価で、ソニーのプレイステーション(PS)やマイクロソフトのXboxOneにグラフィックで劣った。独自性にこだわるあまりゲーム開発会社から敬遠され、発売当初から魅力的なソフトがないという問題に悩まされた。

世界最大のゲームソフト販売店であるゲームストップでは、スイッチの先行予約がWiiUのそれを上回った。「多くの顧客が複数のソフトを注文した。特に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が人気だ」と、販売担当シニアディレクターのエリック・ブライトは言う。

任天堂は89年のゲームボーイ発売以降、ハードとソフトの相乗効果で携帯ゲーム機市場を支配してきた。ニンテンドー2DSや3DS向けの「ポケットモンスター サン」「ポケットモンスター ムーン」といったゲームはベストセラーとなり、こうしたソフトのおかげで3DSは昨年9月時点で累計6100万台以上が売れている。

スマートフォンやタブレット市場には手を出さずにいたが、昨年ついにDeNAと提携して人気キャラクターのモバイルゲームに乗り出した。その1つである「スーパーマリオ ラン」(アップル版)は9000万ダウンロードを達成。アンドロイド版は今月末に配信予定だ。話題となったポケモンGOも120億円以上の利益に寄与した。

スイッチがおもちゃ業界でこの春一番の注目株であることは間違いない。かつてWiiがかけた「世代を超えるゲームの魔法」がよみがえることを任天堂も期待している。Wiiが発売された06年から、多くのことが変わった。あらゆる機器で気軽に、無料のゲームを楽しめる今、かつてないほどゲーム人口は増えている。

任天堂にはさまざまな人気キャラクターがいる。彼らはみんなスイッチで新しい冒険に飛び出そうとしている。

(文:ジョン・ガウディオシ)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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