Access Ranking
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加地信之
吉本興業カンパニー 株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー
マネジメントセンター 東京マネジメントセクション 「自分がどこに行きたいのか」を考えることが
正しい決断につながる -
坊垣佳奈
株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役 海外の事例を日本流にアレンジしつつ
客観視を通じて「決断力」を高める -
山内学
株式会社アミューズ アジア事業部 部長 兼
艾米斯傳媒(上海)有限公司 取締役 私の仕事は「港」、
日中の架け橋になりたい -
小林寛之
株式会社トリドールホールディングス 執行役員 経営企画室長 兼
TDインベストメント株式会社 代表取締役社長 仮説と検証で「決断」を早め、
グローバルな世界を戦い抜く - 核家族化が進んだ江戸時代「庶民の介護」事情 江戸時代の老親介護「担い手は男性メイン」の理由
そんな新しいグローバル社会にいち早くチャレンジし、今必死に戦っている人たちにとって、必須の能力となっているのがスピード感のある決断力だ。では、どうやって彼らは「グローバル社会で求められる決断力」を身に付けることができたのか。日々世界を目指し、格闘する彼らの姿を見つめながら、そのヒントを探る。
一人暮らしってこんなものだったかな?
――同志社大学を志望された理由は何でしょうか。
カズレーザー もともと一人暮らしをしたいと思っていて、自宅(埼玉県)から遠くにある大学に行きたかったんですよ。でも、試験勉強は嫌いで。同志社大学はセンター試験で最初に受かったのですが、そのあとは緊張の糸が切れてしまって、そのまま同志社大学に決めました。
――初めての京都での生活はいかがでしたか。
カズレーザー 1・2回生のときは京都郊外の京田辺キャンパスで、「あれ? 一人暮らしってこんなものだったかな」と。京都なら学生街があって、プラタナスの並木道があって、行きつけの喫茶店がある。そんな漠然としたイメージがあったのですが、全然違っていましたね。
――大学在学中には、どのような活動をされていたのですか。
カズレーザー お笑いは好きだったので、入学式の日に喜劇研究会に入って、在学中はずっとサークルに入り浸っていました。高校時代、同志社大学の喜劇研究会と早稲田大学の寄席研究会が合同でライブをしていたのを観に行ったことがあって、最初からサークルに入るなら喜劇研究会にしようと。
サークルでは、月1回の学内のお笑いライブがあったのでそのために、仲間とネタをつくったり、チラシをまいたりする日々を過ごしました。アルバイトはほとんどしていません!16歳のころから「労働」という言葉が嫌いで。お金がないなら、ないでいい。
――大学時代に経験したことで、現在、役に立っていることはありますか。
カズレーザー 家賃が払えず住む場所がなくなってしまって、大学の部室でこっそり暮らしていたことがあります。半年くらい家がなかったのですが、部室で暮らしたことで、どこでも寝られるようになりましたね。
芸人をやっているだけで楽しい
――大学卒業後の進路はどのように思い描かれていましたか。
カズレーザー 就職活動はほとんどしませんでした。極力仕事したくないのでコスパのいい仕事は何かなーと考えたとき、横綱かなと思ったのですがさすがに今からじゃ無理だなって。
あと何かなーと考えたとき、もともとお笑い好きだったから芸人になろうって思いました。
それで卒業後は東京に戻って、現在の事務所の養成所に入りました。週2~3回授業を受けたり、事務所の稽古場に行って、先輩芸人の前でネタをやったり。コントの勉強や発声練習もしていましたね。
芸人って、芸人になると思った瞬間から芸人だと思うんですよ。お金は稼げなかったけど、やっていて楽しかったので、全然苦ではありませんでした。
――あまり仕事はなかったのですか。
カズレーザー 仕事もなければ収入もない!ライブに出てネタをやるくらいですね。でも、将来に対する不安はまったくありませんでした。芸人という職業を選んだ時点で99%成功はないです。稼げなくて当たり前。今も働いている感覚はありません。
労働って対価を求めてやることだから苦手なんですよね。日本は不景気だと言っても豊かな国で、お金がなくても暮らしていけるんですよ!それなのに、なぜ一番のモノサシに収入がくるのか昔からよく意味がわからなくて。自分は物欲もなく、お金にも執着はありません。お金がなくても、芸人をやっているだけで楽しい。自分が自発的にすることでないと好きにはなれません。
――苦しい思いをすることはなかったのですか。
カズレーザー そもそも何千回もスベり散らかしてきているので、スベるのも苦じゃないんです。走って好タイムが出ないのは、自分の足が遅いからでしょう。つまらないから、スベっているわけです。そこに苦労や口惜しさを感じたことはありません。
今でも成功は運だと思っている
――当時はどのような生活でしたか。
カズレーザー 時間だけは無限にあったので、毎日ネタをつくり続けていました。
――そして2012年に「メイプル超合金」を結成。結成のきっかけは何だったのですか。
カズレーザー ピン芸人だったのですが、あまりにもスベっていたので、事務所の方に「このままスベり続けて死ぬのか、コンビを組むか、選べ」と言われました。死にたくはなかったので、コンビを組みました。でも、コンビを組んでからは楽になりましたね。ネタもウケやすくなった気がしますし。
――仕事の基本とは何でしょうか。
カズレーザー “勘違いし続けること”じゃないですかね。夢中になっていると何も気づかずに時間が過ぎていくじゃないですか。そういう人のほうが人を惹きつけている気がします。
人が成功する理由って大半が偶然だと思うんです。偶然のレベルや運を高める方法がないのであれば、夢中になって楽しんでいたほうが得だと思います。「この成功者はこれをやって成功した、あれをやって成功した」と、いいとこどりをして成功した人を見たことがありません。
成功した人と同じことをするのではなく、なぜその人はそうしたのかを考えるぐらいにとどめておいたほうがいいと思います。大成功した師匠クラスですら、なぜ売れているのかと言えば、「運が良かったからや」といまだにおっしゃっています。
売り場に並ばなければ宝くじは買えない
――それでも、自分がイケると思った瞬間はあると思うのですが。
カズレーザー 思ったことないですね。お笑いにおける売れる売れないは、宝くじみたいなもので、運が必要だと思うんです。
でも、実は宝くじ売り場自体に並んでいない人がすごく多い。宝くじ売り場がどこにあるのかがわかっていないんです。宝くじを買ってもいないのに、当たるかどうか待っている人たちがあまりにもいます。売れるために最低限必要な要素はあると思うんです。そんなことを、コンビを組んでから意識するようになりましたね。
――売れる理由があるとすれば何でしょうか。
カズレーザー 売れている芸人のネタは、需要があるから売れているんです。世間から必要とされていないネタは面白くても売れません。今こういうテイストのネタが流行っていると思ったら、売れるネタをつくったほうがいい。ただ、自分で面白いと思うネタでないと、やっていて楽しくないでしょうね。
――よく経営用語で「ブルーオーシャン(競争相手が少ない市場で、注目されないが将来有望かもしれない)」「レッドオーシャン(今人気はあるが競争相手が多く、勝ち残るのが難しい市場)」と言いますが、ご自身はどちらを目指していたと思いますか。
カズレーザー お笑いはあまりにも「ブルーオーシャン」が大きすぎると思うんです。何でもお笑いになるから、いっぱい新しい海があると思って飛び込む人がいる。でも飛び込んでみたら、一匹も魚がいなかったということがよくあります。「すごいしょっぱいじゃん、この水、塩分強いな」って。
――日頃どのようなことを心掛けていますか。
カズレーザー 参考にならないかもしれませんが、僕は「別に自分がいなくても世の中は成立する」と思っています。そう思えば、「こうしなきゃ、いけない」ということがなくなる気がします。人生に価値があるとか、生きていることが素晴らしいとか、そんなことないと思うんです。人に迷惑をかけないかぎりは、何事も気にしなくていいと思います。
解決策が見つからないことは悩まない
――キーパーソンとコミュニケーションをとる際にはどのような点に気を付けていますか。
カズレーザー 「本当はこう考えているんじゃないか」と勘繰らないように決めています。全部言葉どおり受け取るようにしています。言葉の裏は絶対に読まないですね。そんなことを言い出したら、全員ウソをついているように思ってしまいますから。
たまに失敗したなと思うときもあります。そんなときは家に帰って、お酒を飲んで、布団に入って、眠りにつくまで悩みます。でも、それまでに解決しなければ、もうその事柄では一生悩まない。そう決めています。寝るまでに解決策が見つからなければ、一生解決しない。
科学的な発見とかなら悩み続けたほうがいいと思いますが、そもそも人間関係の悩みなんて解決できません。どうせまた怒られるし、誰かに嫌われる。それなら、気にしても仕方がない。
――将来の目標を教えてください。また、具体的なキャリアプランがありましたら聞かせてください。
カズレーザー 将来の目標はまったくありません。今は芸人をやってごはんを食べさせていただいているので、こういう生活が続けばいいと思います。あとは、仲は良いけれど、全然売れない芸人がいっぱいいる。そいつらと一緒に売れる方法が見つかったらいいなと思います。仲良いやつとお笑いができれば、それが一番楽しいですからね。